3.
 


「さぁはじまりました。
ジュニア級のまだ初々しいウマ娘が集う中山レース場。
澄み切った青空の元、今...一斉にスタートしました!!」


メイクデビュー時から1着を取りクラシック三冠を目指すウマ娘。
惜しくも敗れ、未勝利戦ですぐに挽回するウマ娘。
伸び悩み、未勝利戦で何度も破れデビューを諦めるウマ娘。
進み方は十人十色。


私はというと、メイクデビューは5着に終わり
次の未勝利戦で3着、その次で1着と順当にデビューを果たした。


今日走るレースはジュニア級のPreオープン、芝、1600mマイル。
すでにジュニア級のG3のレースが終わっている中、そう目立たないレース...らしい。トレーナー曰く。


後ろから乱れた呼吸音が聞こえる。
最終コーナー、恐らく直線で抜くために必死にペースを上げてるのだろう。

12月のG1を狙って出走したのかな。
でもこの辺で私も1着いくつか取っておかないと来年の重賞出走が難しくなるし。
トレーナーもここは取れと言うし。


「最終コーナー、ナマエとアンダントールが最初に並んで飛び込んできた!
後ろのウマ娘達も一斉に仕掛ける!!」


隣を走る娘(こ)はもうフォームが崩れている。
このままのペースで走り続ければ沈んでいくだろうが、その後ろから誰か追い上げてきている。
このままでは抜かれるだろう。


「...。」


「スルーザーここで追い上げてきた!!
中山の直線は短いぞ!先頭をとらえられるか!?
ああっとここで!!ナマエがペースを上げました!!
徐々に徐々に引き離され...ナマエ先頭のままゴーール!!」



観客席と走った娘(こ)達にお辞儀をし、早々に戻る。
勝った後にあまり長居はしたくない。
脚を一度も止めず、控室の扉を開く。


「やぁやぁお疲れさん。
折角1着取ったんだからもうちょっと居たらよかったのに。」

「いえ、そういうの苦手なので…。」


控室に戻るとトレーナーが特に変わりなく迎えてくれた。
その手には新聞が。


「あと来月のオープンで勝って再来月のG3でも勝てば、朝日杯も優先出走権取れると思うけど?」

「その裏のPreオープンならば。」

「そうあからさまに嫌がられるとねぇ。
ま、それがいいかね。クラシック狙うならまだしも焦る必要はない。」


一般的なトレーナーならこんなことは言わない。
そもそも私のような消極的なウマ娘のトレーナーになんてならないだろう。
やはり変わっている。


「まぁ何だかんだでレースは詰まってるんだ。
明日のメンテナンスはしっかりするぞ。」

「わかりました。」


ただ一つ言えるのは、この人の観察眼は相当なものであるということ。
それに加えて的確なトレーニング、メンタルフィジカルのケアも抜かりない。

何でこんな人がうちみたいな共学にいるのか。
それこそトレセン学園でトレーナーをやれば、相当な功績を残せるだろうに。

それを以前に聞いたら"お前と似たようなもんさ"と軽くあしらわれた。


外に出れば空は秋色に染まっていた。
きっとすぐに冬は来る。



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