2.
「ねぇねぇトレセン学園どうだった?
イケメンいた?!」
トレセン学園での模擬レースが終わった週明け。
朝練はないが、普通に学校があるので普通に通学し、普通に朝のホームルームを受けた後、
同じくウマ娘で友人のシャーロットが嬉々として話しかけてくる。
「見た目通りだだっ広い学園だったよ。
イケメンて…あそこウマ娘専用の学園だよ?」
「いやいやいや。性別なんて関係ないんだよイケメンは!
ほらフジキセキ様とか!見た?生で見た?!」
いた。
確かにあの人がトラックに降り立った瞬間何処からともなく黄色い歓声が上がった。
でもそれならブライアンさんだって負けてなかっ…
「ナマエちゃん?」
「うん、見たよ。すっごい歓声だったしファンサ凄かった。」
そう伝えると友人は羨ましげに声を上げる。
フジキセキさん、バスケとか似合いそう。
「…そういえば2限目の体育ってバスケだっけ。」
「そうそう。もう球技とかやんなっちゃう。
休んだら怒られるかなぁ。」
「うちは共学だから仕方ないよ。
ヒトもウマ娘も区別なくがここの学校の校訓だし。」
「むぅ〜、そうなんだけどさ。
ウマ娘にヒトと一緒に運動させるってどうかと思うのよ。
ボール壊したり、怪我させちゃいそうで試合どころじゃないし…。」
友人は不満を露わに口を尖らす。
ヒトとウマ娘の身体能力は天と地の差がある。
例えヒトのトップアスリートでも、ウマ娘に身体能力が届くことはない。
殆ど同じ姿形をしているのに不思議なことに。
「でもナマエちゃんって体育でボール壊したり物壊したり全然しないよね。
なんていうか、ちょっと運動神経良いヒトに見える。」
「抑えるのは得意だから。」
前にボールを壊してしまった彼女に、お箸を持つのとイメージは同じだと助言したが、
彼女曰く"頭でわかっていても体を動かすと制御できない"だそうだ。
レース中にも掛かったり、折り合いがつかなくなるウマ娘もいるからそういうことなのだろう。
それに比べて私は抑える方が性分に合っているから、レース中でも自分が決めたペースを乱すことはない。
まぁ、力任せに走れない理由もあるからなのだけど…
「そういえば、ナマエちゃんメイクデビューいつ?」
「来月以降かな、トレーナーがいいよって言ったの。」
「えぇー、今月には…ていうかナマエちゃんならもっと早くにデビューできてたのにぃ。
うちの学校ウマ娘が少ないけどさ、あのトレーナーさんだから余計に走る娘(こ)少ないよね。
ナマエちゃん良く続けてるなってホント思う。」
うちのトレーナーは雰囲気が独特で、何より毒舌家だ。
相手のコンプレックスとかそういうのは一切配慮せずズバズバ指摘するので、心が折れてやめる娘(こ)は数知れず。
私の友人も辞めたその一人だ。
「言うことキツいけど、事実だしね。」
「いやいや、だからってさぁ…」
と、友人が愚痴を言う前に予鈴が鳴る。
何を言われようと、それで目標が達成されるならそれでいい。
私は私自身に誇りも自賛もない。
普通に走って、それなりの結果が残せればそれでいいのだから。
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