2.
 


病院でレントゲンなどで調べた結果、骨にも異常なしだった。

筋肉には炎症はあるものの、筋肉痛の範疇でおさまっているとのことで。
無理な運動はせずに過ごしていけば徐々に治っていくと診断を受けた。


そのことにはホッとしたものの、今後のことについて考えるとゲンナリする。


「ひとまず怪我はないことがわかってよかったが…これからどうするかね。」

「今まで通り…とはいかないですよね。」


数多の人の目がある中、世間の話題の中心であるナリタブライアンにほんの一瞬とはいえ、追い付いてしまったのだ。

普通の、平凡な、特筆することのないジュニアという評価は確実に変わってしまうだろう。


「そうだな。この界隈ではあの合同模擬レースでナマエの本格化がはじまったって評価みたいだな。」

「…。」


計画では、クラシックの終わりくらいからと自分では思っていたのだ。
それまでは、静かに目立たず走りたかった。
勝手な期待や評価をもらうことは、とても重くそれが枷となって走っても楽しくない。


「残り250m。
今度からは期待されるだろうな。」

「はぁ…あんなのもう一回やったら、今度こそ故障します。」


あの短い距離の出来事で、こんなに満身創痍になるのだ。
レースの度にあんな走り方したら、選手生命は確実に縮む。


「その意見には俺も賛成だ。
お前はまだ体が出来上がってない。
そもそもクラシックでもまだ体が未成熟な時期なんだ。
それを無理に仕上げるようなクラシック路線ってのは俺は…」


そこまで話してトレーナーは口を閉じる。


「とりあえず、お前は来月の出走はなしだ。
状況によっちゃ再来月もだが、ある程度の走りをしても耐えられるように、基礎トレを徹底する。
昨日の走り方は、成長期のお前には負荷がかかり過ぎる。」


つくづく、この人がトレーナーで良かったと思う。
多くのトレーナーは、勝てるのならあの走りが出来る様に鍛えると言うだろう。

この人の基本方針は、勝つための走りよりも"長く"走ることを最優先とする。
先輩たちも、うちのチームで故障で走れなくなったウマ娘を見たことがないという。

その代わり、トレーナーの厳しい物言いに後を立つウマ娘も少なくはないのだが…


「祖父が、貴方の下につけと言った意味がよく分かりました。」

「あの頑固爺さんに孫を任されるなんて光栄だよ。
…あ、頑固爺さんって言ったのは言うなよ。」


メディアも突撃してくるだろうが、お前は上手く逃げな。
そう言って車を走らせたトレーナー。


あんな模擬レースでガラリと身の置き方が変わるなんて。
つくづくナリタブライアンというウマ娘はとんでもない人なのだと、認識を改めた。



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