あなたに
 


「そうそう、今週末イタチ兄の誕生会をするんだけどなまえさんもどう?」


山奥の縁側。
遊びに来たサラダちゃんが頬張っていた団子を飲み込んだ後、軽快にそう言った。

6月…紫陽花も満開の時期。
そうか、もうそんな時期なのか。


「…折角のお誘いだけど、私は任務でね。
サラダちゃんとサクラちゃんが祝ってくれるだけでも、十分喜んでくれるよ。」


と、何とも言い訳がましい断りをする。

確かに任務はある。
だけども"家族"である彼女たちに祝ってもらえる席に私がいるのもな、と断りたかったのは事実。


「あ…そうなんだ…。」

「うん、とはいえ私も何か贈ろうとは思ってるから…大丈夫だよ。」


自分で言ってて何が大丈夫なのだろうと思ったけど、あまりにもしょんぼりしているサラダちゃんを見るとそう言ってしまっていた。

しかし、贈り物…


当日はケーキは勿論食べるだろうし、団子やら甘いものは彼女らが既に用意してるだろう。
幾ら甘いものが好きなイタチさんといえども、そう大量になまものを贈られても困るだけだ。


いつもよく働いて、助けてもらってばかりだからちゃんと考えて贈りたい。
それにもう二度と祝えないはずだった誕生日だ。
食べ物以外にイタチさんが好きなものって…



「イタチの好きなもの?」

と、偶然にもカカシ兄さんとテンゾウさ…ヤマトさんが奇跡的に揃っていたので相談する。
二人はパチクリと瞬きする。


「いや、お前がわかんないんじゃ俺たちがわかるわけないでしょ。」

「私だって四六時中いたわけじゃないし、男同士だから話すこともあるんじゃないかって思ったんだけど。」

「イタチがいたのは10代前半だしな。
男同士っていうか…」


ヤマトさんが真剣に思い返してくれてる中、カカシ兄さんがポン、と手を打つ。
そして…


「思い返せばイタチにはこのバイブルを渡せていなかったが、これを機会に…」

「貴方に相談した私がバカでした。」


その懐から出されるだろう、いかがわしい小説の表紙を見る前にバサリと会話を切る。


「ヒドイ!
お前はまだこの小説の素晴らしさがわからないの?!」

「音読できない不健全な小説であることはよく知ってます。」

と言えば、カカシ兄さんはしょぼーんとする。


「サスケに聞いてみればいいんじゃないか?
幼少期といえど、あとは一緒に暮らしていたサスケくらいしか、詳しい人間はいないと思うよ。」

「確かに…盲点でした。
ヤマトさん、ありがとうございます。」


ペコリ、と礼をして手紙を書くために家に戻る。

誕生日までは時間がある。
まぁそれまでに戻ってくるだろうと、烏に文を持たせて飛ばす。


そうして3日後、烏が文をもって帰ってくる。
意外に早かった。

早速手紙を読む。


ーーー
・おむすび(昆布)
・キャベツ
・団子屋めぐり
・読書
ーーー


…簡潔すぎる
手紙というか最早買い物リスト、ようはメモに近い。
読書以外食べ物ですし。
まぁ帰ってきただけマシか。

「…。」

サスケもこれが限界ってところか。
シスイさんならもっと知ってるのだろうが、それを聞く事は叶わない事だ。


イタチさんの好きなもの…

甘いもの
読書


平和…


忍なんていらない世界に出来れば一番の贈り物になるが、それも叶わない事だ。
どーしたものかなぁ…


「悩み事ですか。」


あれから数日。
いいアイディアが浮かばず、うっかり仕事中も考えてしまっていた。


「…悩み事というほどでもないんだけど、仕事の事じゃないから大丈夫だよ。」

まぁ仕事中に仕事以外のことを考えるなという話だけども。
そして本人に相談するものでもなし。


「よければ、話は聞きますが。」

そう、本人に聞くことじゃないんだけど。
数日悩んで解が出ないから割ともう限界だ。


「…人に物を贈る時って何を渡します?」

この数秒で誕生日のことを悟られないように言葉回しを考えたが、この人ならすぐにピンと来るよな。
でも自分の事だとかなり無頓着だから、自分の誕生日のプレゼントを用意するとは思わないかもしれない。


暫し、イタチさんが考える。


「相手の好みがわかっていればそれを贈りますが、それが他の人間と被るなら控えますね。」

「そうだよなぁ…それが被ってそうで悩んでるんだよ。」


んー…と椅子の背もたれに伸びをしながら凭れる。
おめでとうだけ言って終わりってのもなー。


「消費するものと、残るものという分類もありますが、どちらを贈りたいんですか?」

「あー…うーん…残るものかぁ…
ずっと使い続けられるのもいいけど、荷物になったり処分に困るものはなぁ…かと言って食べ物とかなまものは期限あるから他の人にも貰ってたら消費するの大変だから避けたいなぁって…」


萎え切らない。
いやホントに何贈ればいいのか全然思いつかない。
昔は、特に暁にいたときは贈るのは私だけだったから何にも迷うこともなかったのだけど。

うーん、と天井を見上げながら考えていると、空気が笑った。
それにイタチさんを見れば案の定、クスクス笑っていた。


「悪いね、こんな相談に付き合わせて…」

「いや、そうではなく。
貴女がこんなに悩むなんて、どんなに難題な任務でもないのに。
よほど、贈り先は大事な人なのですね。」

「…うん、凄く大事。
いつもいつも助けてもらって、その人がいなければ私はこうしていられなかったと思う。」


本当にそう。
人としてカタチを保ててるのは、イタチさんのお陰だ。
だから、イタチさんが望むものを贈りたいのだけど。


「無理に物を贈らなくても、その言葉で十分だと思いますが。」

「言葉だけっていうのもね、ちゃんと伝えられるかもわからないし。
出来る限り、その人の望むものを贈りたいんだよ。
まぁ確かに、ものじゃなくてもいいんだろうけど…」


そう、イタチさんなら物なんてなくたっていいと言うのはわかってはいるけど…


「そういえば、近々コノハ美術館で有名画家の特別展があるそうですよ。
前売りチケットは明日発売らしいです。」

「へぇー、今はそんなことをやってるんだな。」


思いがけず、芸術は爆発だー。という声を思い出した。
美術館か…イタチさんは興味あるんだろうか。


「今まで芸術なんて嗜むことなどはありませんでしたが、良い機会かもしれないですね。
絵画だけでなく、他国の遺物なども展示されるそうですよ。」

「結構大規模な展示なんだな。
そういえば、そういう歴史遺物に興味あるって言ってたね。」


他国の武具、それは普通に私も気になる。


「どうやら、夜も22時まで開いてるそうですよ。」

「そこまで開いてるなら、任務後にも行けそうだな。」


結構気合の入った展示なんだな。


「楽しみにしてますね。」

「イタチくんがそれがいいなら、それにしようか…」


……



あーーーー…



「ちゃんと、2枚組で買ってくださいね。」


小さく笑ってイタチさんは書類を持って部屋を出る。



「あぁ、もう…」


私の方がサプライズを受けた気分だ。
敵わないよ、貴方には。
























ーーーあとがき
実咲さま、ほんっっっっとうに、本当に遅くなり申し訳ございませんーーーーー!!!!!
でもリクエスト頂きめちゃくちゃ嬉しかったし、書いてて楽しかったです!!(´;Д;`)
そして本気でイタチさんへのプレゼント、悩みました(笑)
オチはこんな感じになりましたが、イタチさんってさり気ないフォローと誘導尋問めっちゃ上手いだろうなって。
本当は、イタチさんを思いっきり祝いたかったのですが、それが書きたくてこんな感じになりました。
ご期待にそえれてないかもですが、少しでも楽しんで頂ければ幸いですm(_ _)m
ではでは、改めてリクエストありがとうございました!!



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