現代で、続く関係
 


 
 
「県外の大学に行くことにした。」



年が明けて、いつもより早く部活が終わった夕暮れ。
たまたま、イタチさんと会った。

剣道部と弓道部は同じ敷地内で活動することが多いから、去年の夏、3年であるイタチさんが引退するまではほぼ毎日顔を合わせていた。

引退後は、ずっと受験勉強をしているとサスケから聞いてはいたけど。
たまに校内で見かけることはあっても、こうして話すのは久しぶりだった。


だから、イタチさんが卒業後どうするかなんて聞く機会もなかった。
サスケに聞けばよかったのだろうけど、そこまで踏み込む間柄でもない。


…と自分に言い聞かせている。



そうして部内の近況やら何やら世間話をしたのち、イタチさんから冒頭の告白だった。


「…そう、なんですね。法学部ですか?」

「いや、国際学部だ。」


法学部か、と聞いたのはイタチさんの家は代々警察官で上官までしているから、てっきりイタチさんも警察官になるのだと思ったからだ。

そんな中、国際学部というのは想定外だった。


「国際学部…って、英語の勉強ですか?」

「まぁそうだな。海外でビジネスをしていくために語学も学ぶし経済、政治、法律のことも学ぶ。」


たぶん、イタチさんは何ら難しいことを言ってないのかもしれないけど、私には言っていることの意味がよくわからなかった。

だって今まで剣道のことしか考えてなかった。
サスケだってきっと弓道のことしか考えてないと思うし、イタチさんだって同じだと思ったのに、久しぶりに会ったらこれだ。


「えぇと…イタチさんは海外に行くんですか?」

「流石に、そこまでは考えてないが国内だけでなく国外の仕事も出来ればと思っている。
世界には色んな人間がいて、色んな思想があるのに、自分の国の中だけしか知らないのは勿体無いだろ?」


そう言ってイタチさんは無邪気に微笑む。
弓道部の全国大会で優勝した時ですらこんな笑顔にならなかったのに。

こんな話でなければ、私も釣られて笑顔になっていたのだけど。


「なんだか、スケールの大きな話ですね…。」

「そうか?
今の時代は日本国内にいたって外国人と会うのだからそう変わらないさ。」


だったら、別に日本で普通に経済学部でも良かったんじゃ…と思ったけど飲み込んだ。
きっとイタチさんにはやりたいことがあるのだろう。


「お前も、来年は2年だからな。
そろそろ考えてた方がいいぞ。」

「あはは…頑張ります。」


いや、全然何にも考えられない。
夢なんてないし、強いて言うなら"普通"に暮らせればいいというか…

いや、それよりも。
春になってイタチさんが卒業したらもう、会うことはないということだ。
4年後なんてイタチさんは日本にはいなくて、海外で働くことになったらイタチさんは外国人と結婚するんだろう。
そうしたら、もう一生会うことはない。


笑顔で突如突きつけられた未来に、気持ちは沈むしかなかった。


「まぁ、進路に悩むなら先輩として相談くらいには乗れる。」

「でも、イタチさん忙しくなるでしょう。」

「部活をやっていた今より、時間はできるさ。
あぁ、逆にお前の時間がないか。今年はお前が大将じゃないか?」

「流石に、2年で先輩を差し置いてそのポジションは無いと思います。」


言えない、イタチさんが見てくれてたから頑張ったなんて言えない。

小さい頃から半ば強制的にやらされてるだけで、別に本気で剣道をしてるわけじゃないし、勝ち負けなんてこだわりはない。


そんなことより、イタチさんは何も思わないんだな。

イタチさんの家は武道を嗜んでいて、イタチさんとサスケが一緒に、昔からうちの道場に習いに来ていて、多少なりとも交流は深かったのだけど。

イタチさんのただのクラスメイトより仲は良かったと思っていたのだけど…


「大将じゃなくとも、お前が出るのは必須だろう。
今年も楽しみにしてる。」

「良い報告が、出来るように頑張ります。」


剣道の結果なんてどうでもいい。
どうせイタチさんとはもう会えないのだから。

まぁ、でも、連絡をする口実は出来たかな。


と、伸びていくイタチさんの影を見ながら歩いていればその影が止まる。


「お前、卒業したら俺ともう会わないつもりだな?」

「え、いや、だってイタチさん遠くの大学に行くんでしょう?」


訝しげにイタチさんが眉を潜めながらそう問うてくるから、慌てて弁解する。
そんなわけない、会えるのならこれからだってずっと会いたいのに何言ってんだこの人は。


「確かに他県とは言ったが、隣の県だぞ?」

勿論、実家から通学は難しいから一人暮らしだけども。


驚く私を他所に、イタチさんはまた歩き出す。


「え、え?隣の県??」

「そうだが。
なんだ、俺が日本の最北か最南の県に行くと思っていたのか?」


カラカラと、イタチさんは軽く笑う。

えぇ…もう、そうならそうと最初から言ってくれればいいのに…


「はぁ…卒業したらもう会えないかと思いましたよ。」

「流石にそうなったら俺も色々考えたさ。
まぁ、そこなら大会で遠征に行くより近いんだから、たまには遊びに来れるだろう。」


そうですね。と返せば、歩き出したイタチさんがすれ違いざまに頭にぽん、と手を乗せる。


「大会の日、決まったらちゃんと連絡しろよ。」

「だったら、全国大会までちゃんと来てくださいよ。」


分かれ道、その言葉にイタチさんは手を振り歩いていく。


まだもう少し、この関係が続くのならば。
明日から、練習量を増やさないと。


まだ少し、まだ少し。
歩く先には星空が広がり始めていた。





























ーーーーあとがき
名無しのなな様、めっちゃくちゃ遅くなってごめんなさい!!!
そして2人が付き合ってなくてゴメンナサイ!!!!
ほのぼの甘めになってないし毎度毎度リクエスト通りじゃなくて土下座ものです…
ただ、現パロめっちゃ書きたかったので機会頂けて私は大変楽しかったです(;ω;)
夢を見るイタチさん、いいなぁって。原作でもうちはが不穏になる前は、シスイさんと未来なことを色々話してたんだろうかと思いを馳せて書きました。
次書くときは、しっかりほのぼの甘めを書きたい所存です…
では、リクエスト頂きありがとうございましたヽ(;▽;)



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