第四次忍界大戦後のふたり
 


ナルトとの決着も終わり、旅に出てしばらく。


俺の元に一羽の烏が舞い降りた。




「お前は…」


イタチの鴉か、と言いかけてやめた。
この鴉はイタチがなまえに遺したものだ。
であれば、所有者はなまえだろうがそれを聞いたところで相手は鴉だ。

そしてその当の鴉といえば、脚に手紙が括り付けられている。
それを受け取れば、黒い羽を広げ直ぐに飛び立っていった。

その行方を暫し見届けた後、手紙を広げる。



「…あいつは、何を考えている。」

内容は、火の国西部のとある街に来いというものだった。
まさか大筒木の件かと思ったが、であれば火影であるカカシから伝令が来るはずだ。

そしてこれは紛れもなくなまえの字であり、ハッキリと"手助けをして欲しい"と書いてある。

任務のことなら同じ暗部の人間を使えばいいだろうに、わざわざどこにいるかもわからない俺を呼ぶというのは写輪眼が必要、ということなのか。


「…。」


まぁ、考えても仕方ない。
場所もそこまで遠くもない。

鷹に返事の手紙を託し、大空に飛んだその影を追うように歩き出した。










「で、わざわざ俺を呼んだんだ。
まさか"これだけ"じゃないだろうな。」

「…やっぱり怒るよなぁ。」


落ち合った場所は確かに街中だった。

だがしかし、今いる場所は農村地であり
あろうことかクナイではなく、クワを持たされ
西日が差す頃まで農作業をさせられた。

現在は畑の傍で、依頼元のじいさんから商品にならないから自由に食っていいと言われた野菜をなまえが齧っていた。


「いや〜、木の葉もさ、人手不足で…
暗部もランク関係なしに依頼をこなしててねぇ。」

「お前、まさかカカシじゃないだろうな。」


この緩みきった空気、ヘラヘラとした態度。
某火影を彷彿とさせる。

なまえくらいの忍が、こんな下忍がやるような任務に、本人が望んだってあてがわれるはずがない。


他に何かあるはずだ。


未だに信じられず、キュウリを呑気に齧る横顔を睨みつける。



「…悪いけど、ホントにこれだけなんだ。

ほら、それにサスケが居ないと依頼をクリアできなかったろう?
依頼主の目利きを写輪眼でコピーしてもらわないとさ。私じゃ野菜の良し悪しを区別できないし…」

「…。
他にも、こういう任務を受けてるのか。」


そう問えば、キュウリを食べる手が止まる。
そうして頬にまつげの影が浮く。


「全部話せ。」

「サスケも、鋭くなったなぁ。」


苦笑いするなまえ。
やっぱり、それだけじゃなかった。


話を聞けば、近々五大国の暗部を集約した機関が設置されるという。
なまえはその局長候補にあげられているらしい。

五大国間で和平条約が結ばれていく最中、暗部の数に対する特殊任務の数が少なくなっていくことが予想される。


一般の忍や一般人の生活を送れる者は、暗部を解任して普通の暮らしをしてほしい。

だから、皆のいう"普通の暮らし"というのを体験してるのだという。


「奪ったり、人殺しはできても
こういう人の生活の営みというのを私はあまり知らないから。

そんな人間に"普通の暮らしをしてほしい"、なんて言われても説得力のカケラもないだろう。」


そうして落ちて土がつき、虫が食っていた野菜を廃棄用のカゴに投げ入れる。
それは寸分の狂いもなく、無駄な軌道は描かない。


「まぁでも、こういうのは難しいな。
今までは0か1かの判断しかいらなかったから、こういう感覚的で主観的なものは私には難しい。

この野菜は食えるか食えないか。
食えれば売れる、食えなければ捨てる。

そんな判断しかできないからな。」


こんな、命のやり取りでもないことが難しいという。
うちはマダラと対峙しても臆することのなかった忍が、だ。

なまえは物心つく前から、あのダンゾウや大蛇丸に忍のいろはを叩き込まれていた。
感覚が、俺たちと違ってもおかしくはない。

そんな様子が、まだ幼い子どものように思えた。
そんななまえから俺はイタチを奪った。


もしも、俺が間違いに気付いていれば
今頃なまえは、イタチと一緒になって家庭を築いていたかもしれない。

少しずつ、少しずつ
普通の生活を、普通の幸せを享受していたかもしれない。


俺は、その可能性を奪った。
なのに…


「サスケ?やはり、怒ったか。」

「…いいや。
俺に出来ることならば、なんだってするさ。」


その未来を俺が奪うことを知っていても
ずっとイタチの思いを背負って、俺の行く道を黙って見守ってくれていた。

俺から与えてやれるものなんて、無いに等しいのだろう。


「だったら、たまにこうして顔を見せに帰って来て欲しい。
それと、サクラちゃんやナルト君、カカシ兄さんにも。」

「あぁ、わかっている。」


お前が望むならば、俺の出来る限りを尽くそう。
未だイタチの夢を背負い続けるお前を、今度は俺が見届ける。


それが間違った道を行くことになっても
共に肩を並べることが出来なくとも
剣を交えることになろうとも


俺は最後までお前の理解者であると約束する。





















あとがき−−−−−

リクエスト、ありがとうございました!
ちょっとストーリーだと消化不良の部分があったので、以下めっちゃ語ってます!!笑


大戦後、2人に共通なのはお互いに対しての深い罪悪感があるんだろうなと。
サスケは主人公からイタチを奪ったこと、主人公はサスケからイタチを奪ったことを。

そしてハッキリと謝罪を口にすることができず(謝罪=許しを請うことになるため)、互いに自分を罰して欲しい恨んで欲しい的なニュアンスのことを言い続け、中々決着が付かないものの、どこかで折り合いをつけて、君あり2の最後の会話かなと考えました。

で、この話はその折り合いをつけた後なのですが、この2人、心の底ではまだまだ大反省会してます。
でもそれを口にすると相手が自分をさらに責めてしまうこともわかっているので、大人になった2人は決してそれを漏らさないようにしてるのかなと(笑)

なので大人に近づく2人は、相手に自分を罰してもらうことを求めるのではなく、自分のお願いを聞いてもらうことで、相手に償わせるチャンスをあげようという考えに変わってきてるのを書きたかったです。
罪を認めてあげることで、相手の行き場のない罪悪感を解消させてあげよう的な。

大戦後のサスケと主人公について、改めて考えさせてもらえる機会を貰えて感謝です!!

書きながら終戦直後の2人も書きたいなぁなんて思いました(*'ω'*)



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