5.
「ちょっとしみるよ〜」
「〜〜〜!!!」
ドクターのフニャっとした声とは裏腹に走る激痛。
めっちゃ痛い、ちょっとどころか、しみるどころじゃない。
ものすごく痛い。
はい、終わり!
パタン、と救急箱の蓋が閉まるその音でさえ痛い。
「うーん、熱心なのはいいけどさ…もうちょっとお手柔らかに頼むよ。」
「悪かったって。叩けば響くもんだからついな。」
私とは正反対に全く無傷のモードレッド。
対して私は満身創痍。
言わずもがな、先ほどのシミュレーターでモードレッドにコテンパンにやられたのだ。
「ごめんなさい、モードレッド。
その…私じゃ全然相手にならなくて…」
「良いってことさ。
ま、伸び代は十分にあるってことで。」
傷、しっかり治せよ。
そう言いモードレッドは医務室から颯爽と出て行った。
「…絶対、幻滅された。」
「ま、まぁまぁ。
そもそもなまえちゃんの適性はアサシンな訳だし、白昼堂々とセイバーとやりあうのはちょっとねぇ。」
そうドクターは優しくフォローしてくれるけど、クラスの相性だけじゃない。
元々低い戦闘能力と、圧倒的な経験値の差。
モードレッドにとってはきっと、赤子の手を捻るようなものだっただろう。
思い出せばどんどん沈む気持ちと、じくじくと痛む傷。
「動くのもまだ痛むだろう。
ちょっと待っててね、ロマン特製の甘ぁい紅茶を淹れてあげよう。」
腰を上げ、ドクターも医務室から出て行く。
あぁ、ドクターはいつだって優しい。
何も知らない私とマシュに色んな話をしてくれて、教えてくれたのはドクターなのだ。
「…。」
この恋の行方も、ドクターならば知っているのだろうか。
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