3.
モードレッドは、グランドオーダーが開始されてから初期に召喚されたサーヴァントだった。
戦力の乏しい私達には、彼女の存在はとても大きい。
烈火の如く彼女はその剣を振るう。
そしてイカヅチのように地を走り敵を葬る。
優雅という言葉から遠くとも、その勇ましさに魅入ってしまう。
同じく古株のキャスターのクーフーリンには、猪突猛進だの最早バーサーカなどと揶揄されているが、私にはその真っ直ぐなまでの力強さが美しいと思えた。
彼女のような強さが欲しい
それは武術的なものだけではなく、信念や考え方、精神的なものも含めてだ。
「…、なまえ?」
マシュの声にハッと現実に戻る。
マシュの顔を見れば、紫の瞳が心配げにこちらを見ていた。
「大丈夫ですか?さっきのレイシフトでどこか体調を崩してるのでは…」
「あぁ、いや、全然。
ちょっと考え事してただけ…。」
レイシフト後、マスターが色々と事務作業をしてる間、手持ち無沙汰な私達は2人でマシュの部屋で待機するのが日課のようになっていた。
言葉を変えれば、反省会をしてるのだ。
「それならいいのですが…
最近のなまえはボンヤリしてる事があると言いますか、たまに悲しそうな顔をしているので、私は、とても、心配しています。」
ずずいとマシュが顔を近づけてくる。
流石はマシュ、私の異変にいち早く気付いている。
でもそれは逆も然り、私もマシュの変化にはいち早く気づいているのだ。
「それはマシュだって同じだよ。
マスターの姿を目で追いかけながらボーッとしてること、あるじゃない。」
「えぇ?!私、そんなことを…?」
先輩に変な後輩と思われてないでしょうか…、と頭を抱える。
どうやらマシュは、自分の心に芽生えた感情の名に
まだ気付いていないらしい。
いや、伝えたところで彼女はきっと否定するだろう。
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