2.
剣士としての憧れ
一人の人間としての憧れ
そして…
私がモードレッドに対して特別な思いを寄せていることは、意外にも自分自身で気づいた。
いや、これは誰にも気付かれてはいけない秘め事だ。
かの有名な英雄に、よもや同性相手にこんな浅はかな恋慕を抱いているなんて。
誰もが聞いて呆れるに違いない。
何より当事者のモードレッドにはきっと、距離を置かれてしまうだろう。
だって、出会った瞬間に恋に落ちてしまったなんて。
それも今までろくに情緒を育まれなかったデミサーヴァント風情が。
飴玉のように可愛く甘い乙女の恋などではない。
いやしい情欲をこの身に灯してしまったのだ。
気高き騎士様が、そんなものを受け取るはずがない。
だから、この想いはしまっておかなければならない。
これ以上育んではならない。
深く、深く、暗い場所へと葬らねばはらない。
なのに…
「おっ、お前も剣を扱うのか。
気が向けば、このモードレッド様が相手になってやらんこともないぜ。
ま、これからよろしくな!」
その声が、その眼差しが、次々に生み出してしまう。
殺しても潰しても、この茹るような思いが湧き出てしまう。
「…よろしく、お願いします。」
あぁ、この想いは報われる筈がないというのに。
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