1.
ほんの少し、私は他人より鈍感なだけだった。
人理継続保障機関フィニス・カルデア
生まれた時からここが私の世界の全て。
季節も何もない。
ただ時が過ぎるだけ。
それは姉妹のように一緒に生活してきたマシュも同じだった。
それが、拠り所だったかもしれない。
でもマシュは変わった。
いや、今も彼女は変わりつつあるのだ。
あの事件が、人類最後のマスターが、彼女を変えた。
少しずつ、色付いていくマシュ。
それを羨ましいとは思わなかったけど、どこか一人、置き去りにされていくような感覚を覚えた。
同じ境遇、同じ環境、同じマスターを持つはずなのに。
しかしそんな私を変える出来事は、突然訪れたのだった。
「最終確認−−−英霊召喚システム・フェイト。
状況オールグリーン。」
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄る辺に従い、この身、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者−−−」
マシュの盾を媒体に行われる英霊召喚の儀式。
マスターの声に呼応するように、盾が光り輝く。
「汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ−−−!!」
一層強く輝く電子の光。
直視できず、目を瞑る。
今度はどこぞの物好きな英雄が、マスターの呼びかけに応えるのか。
徐々に小さくなる光。
人影がゆらりと揺れる。
そうして現れた英霊は、鎧を纏い、その手に大剣を携えている。
恐らくは、クラスはセイバーなのだろう。
セイバーといえば、ランサー、アーチャーと並び三騎士の中で最強の格だと言われるが…
「セイバー、モードレッド推参だ!
父上はいるか!!」
この出会いが、私に思いもよらない未来を開いたのだった。
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