三名槍
 


※Twitterお題 リプきたキャラでほのぼの




頭の痛みで目を覚ます。

目を覚ますと言っても瞼は開けてはいない。
にも関わらず、瞼の裏の暗闇の中、目が回っている。

あぁ〜やっちまったなぁ。と、うつ伏せに寝ていた体をどうにかして仰向けにする。
まだまだ胃袋に酒が残っている感覚に、眉をひそめた。
そうしてゆっくり瞼を上げれば案の定、天井は少し歪んでいる。

「…御手杵殿、気分はいかがか。」

いつもより若干掠れ声の、同室である蜻蛉切の声が隣から聞こえる。
全く覚えていないが、蜻蛉切がいるということは無事に部屋には戻れたらしい。

昨日は出陣初めと称して酒盛りをしていたのだが、蜻蛉切が運んでくれたのか。
礼を言おうと隣を見れば、想定外に蜻蛉切は枕を抱えてうつ伏せになっていた。

「…大丈夫か?」

「全くもって、情けない。」

いつもはきちんと人の顔を見て話す蜻蛉切が、うつ伏せのまま身動きをしない。そういや昨日、次朗太刀に捕まってたな。

「この様子だと、御手杵殿が運んでくれたわけでは…」

「ないな。あぁ〜…マジで記憶ねぇ…頭いてぇ…」

うわ言のようにそう呟いていると、障子がススッと開く。それに目を向ければ、この部屋の同室のもう一人がそこに居た。

「おぅおぅ、御二方。もう昼前だぜ。」

現れた日本号に、俺と蜻蛉切は何も返せない。
そういやこいつ、陸奥守と岩融と飲み比べしてたのに何でこんなピンピンしてんだ。

「もしや、日本号殿が部屋に運んでくださったのか。」

「同室のよしみだ。礼には及ばん。
ほれ、取り敢えず座ってこいつを飲みな。」

と、盆に載せた湯飲みを寄越してくる。
それにゆっくりと起き上がり、礼を言う。

なんだ、ただの飲んだくれだと思ってたが案外いいとこあんだな…

「っぶ!!!」

口に含んだ途端、吹き出す。

「おいおい、まだ酔っ払ってんのかぁー?」

「酔っ払いはあんただろ!これ、焼酎じゃねぇか…っ」

うぇっ、と蒸せ返る。
最悪だ、油断した。

「二日酔いには迎え酒だろ。なぁ蜻蛉切。」

話を振られた蜻蛉切に視線を移す。
そこには正座をし、湯飲みを丁寧に持ちながら飲んでる蜻蛉切がいた。

「日本号殿は酒は残ってないようで、流石だな。」

「次の日に残らんくらいにするのが、大人のたしなみってもんよ。」

「ふむ。自分もまだまだ精進せねばな。」

はっはっは。と低音の笑い声が重なるが
急に真顔になった蜻蛉切は、再び枕を持って突っ伏す。

いや、無理に飲むなよ。と突っ込めば
注がれたものを残すわけには…
という言葉を最後に蜻蛉切が言葉を発することはなかった。

「…そういやあんた、最後俺たちに水と称して酒注いでたな。」

「いやぁ、注いだら注いだだけ飲んでくれんもんだから、ついなぁ。」

こうして部屋に戻したんだ。勘弁な。

と、おっさんに似合わぬヘラッとした笑顔をされれば、何故か怒る気が失せるからこの三日後にまた同じことを繰り返すんだな。



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