あなたにまどろむ
うつらうつら。
夢心地の中、香る薔薇の匂い。
そっと目を開ければ、逞しい胸板を纏う真っ白な衣。
腰に感じるしっかりと回された腕。
温かな体温。
頭上で静かな寝息が聞こえる。
少し身じろぎして顔を上げれば、静かに目を閉じている彼の綺麗な顔が見える。
顔にかかっている銀色の髪を払うと柳眉が少しひそめられる。
そんな微々たる変化さえも私の目を奪う。
静かに聞こえる寝息も
感じる体温も
すぐに通り抜けてしまう銀色の髪も
目に映るあなたの全てが愛しくて。
それと同時に"人間"であることに後悔して。
あと何度、あなたの寝顔を見られるのだろう。
あと何度、あなたと朝をむかえられるだろう。
あとどれくらい、あなたと同じ時をいられるのだろう。
あなたに飽きられてしまうか
時間切れになってしまうのか
どちらかわからないけど
いつかくる別れ。
願わくば、最期の時はこうしてあなたの腕の中でまどろみながら眠りにつきたい…
あなたにまどろむ fin.2013.1.1
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