一昨年は何だかんだ言ってはぐらかされて、去年は右耳にしていたピアスを外してそのまま渡された。生まれた時からお隣さんと言うベタなわたし達は当たり前に幼馴染みで小さい頃から一緒だった。ある程度の年頃になってもわたし達はなにひとつ変わらずに一緒にいた。マンガみたいに「他の人には感じない感情…まさか恋?」なんてこともなく、だからターレスが彼女をとっかえひっかえしていたのを知った時も特に何の感情もわいてこなかった。ターレスにも彼女がいて、わたしにも彼氏が出来て、それでもわたし達は一緒にいた。そして、今年もわたしの誕生日がやってきた。
「あ、いたいた」
屋上の重たいドアを開け、ひょっこりと顔を出すと案の定ターレスはいた。小陰に座り、ケータイを弄っていたターレスがふいに顔を上げ目が合う。そのままバタンとドアを閉めてターレスの元に向かうと、眉間にシワを寄せてターレスが見上げてきた。この顔じゃ、きっと今日が何の日か覚えてないに違いない。
「何の用だよ」
「やっぱり…」
「あ?」
「なんでもなーい」
何だか言うのも気に食わないから、思い出すまで黙ってようとわたしは口をつぐんでターレスの隣に座る。あ、ここ涼しい。すると「お、」とターレスが声を上げてわたしの耳を触ってきた。正確に言うとわたしの耳にあるピアスを、だ。
「これ、俺のじゃねえか」
「去年ターレスがくれたんだよ?」
「そうだったか?」
「ありえない」
「無くしたと思ったらこんなとこにあったんだな」
「今更返せとかなしだから」
「わーってるよ、馬鹿名前」
「馬鹿ターレス」
「ほざいてろ。あ、今日俺ん家親いねえから飯作り来いよ」
「えーやだ」
「なんでだよ」
「めんどくさいし、それに今日わたし…」
はっ、として慌てて口を手で塞ぐとターレスが怪訝そうにわたしを見てきた。危ない危ない、危うく言うところだった。今年は絶対に思い出すまで言ってやらないと決めたんだから。なんでもない、と言ってそっぽを向けばターレスは興味なさげにまたケータイを弄り出した。そして何か思い浮かんだかのように、パッと顔を上げた。
「あ、」
「なに、びっくりした」
「そういやこれ、やる」
「へ?」
渡されたのは、指輪。しかも女物。は?とターレスを見上げれば、あ?と聞き返された。お前誕生日だろ、今日、と言われようやく思い出してくれたんだ、と感心しつつも脳内はすぐにこの指輪に釘付けになる。別れた彼女に返された指輪とか、じゃないよね?そんなのだったら、絶対いらない。
「ターレス、」
「あんだよ」
「これ、元カノから返されたとかじゃないよね…?」
「当たり前だろ。」
「え、じゃあどうしたの?」
「名前の為に買ったんだよ。いらねえなら返せ」
「いや、もちろんいるけど…その、ありがと…」
「おうよ」
ターレスと出逢って今までずっと誕生日を過ごして年を重ねてきたが、初めてちゃんとした誕生日プレゼントを貰った。何だかよく分からない感情のまま、指輪を薬指にはめて眺めていると、ふいにターレスにぐいっと顎を掴まれ、横に向かされた。
「忘れるとこだった。」
「は?ちょ、首痛い」
「名前にプレゼントがもうひとつあんだよ」
「え?なに?」
そのまま勢いよく唇を塞がれ、目を見開くとわたしを真っ直ぐ見つめるターレスの黒い目とばっちり視線が交わる。何でキスされてんの?とか考える暇もなくターレスは唇を離すと、唇をペロリと舌で舐めた。
「…感謝しろよ?プレゼントは、この俺だ」
なんてベタすぎる台詞を吐くと、ターレスにまた唇を塞がれ、もうどうでもよくなった。ターレスの首に手を回すと、太陽に反射するように薬指の指輪が輝いた。


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レタス・・・結婚しましょうか((
レタスと結婚レタスと結婚レタスと結婚・・・・、なんという誕生日プレゼント。嬉しすぎて悟飯三杯はいけます!ん?ああご飯。最後の言葉にノックダウンした私はおかしくないですよね、ゆいちゃんの書かれるターレスがかっこよすぎるのですから当たり前ですよね分かります。本当にこんな素敵なゆめをプレゼントして下さってありがとうございました\(^O^)/