「きっかけ?」


「あァ、俺を好きになったきっかけ。」



いつもと同じように、ターレスの家でわたしがお昼ご飯を作って一緒に食べた時だった。アンチョビの入ったスパゲッティは自分としてもかなりの上出来で、ツルンと口からこぼれたままのスパゲッティを口の中に頬張るわたしに、ターレスは真面目そうで、でもどこかおどけたような表情をして「俺を好きになったきっかけはなんだ。」と聞いてきた。



「んー、どうだったかなぁ。」


「忘れたのかよ。」


「忘れたって言うか、いつの間にか好きだった気がする。」


「へェ、」


「あ、でも好きだって気づいたのは花火大会の日だよ。」


「はっ、いつのだよ。」



少しおかしそうに笑い、何回一緒に行ったと思ってんだ。そう動くターレスの唇に、わたしは吸い込まれるようにして思い出を巡らせた。あぁ、あれは確か高校1年生の夏だった。中学の後半にかけてぐんと身長の伸びたターレスは、わたしにはあまりにも大人に見えたんだっけ。高校に入って、化粧を覚えたわたしもターレスに大人っぽく思われているだろうかと不安だったんだ。(似合わないって言われたけどね。)




「おい、名前?」


「あ、ごめんごめん。」


「何考えてたんだよ。」


「ターレスのこと。」



あまりにもサラリと言ったけど、その後に恥ずかしくなった。チラリとターレスを盗み見るとまるで豆鉄砲を喰らった様な表情をして、一瞬ぎょっとした。だって、そんなターレス、見たこと無いから。



「え?なに?」


「いや、驚いてよ。」


「もしかして、ぐっと来た?」


「はっ、なわけねぇー。」


「顔赤いけど?」


「!」


「う そ。」


「・・てめー・・・。」


「ははは、ごめんって。」



「・・・名前お前この俺が許すと思ってんのか?」


「え?」


「悪い子にはお仕置きしなきゃだよなぁ?」


「な、んふっ・・・」



口に持っていこうとしていたパスタを持っていた手をターレスに掴まれたかと思うと、テーブルから身を乗り出したターレスに唇を食べられた。ぐっと後頭部を押さえつけられて、好き放題口内を荒らされる。やっとのことで唇が離れたかと思うと、ニヤリ、と笑うターレスと目が合った。



「なっ、にすんのよ!」


「あ?お仕置きだっつってんだろ。」


「だからって、ご飯ちゅっふむ!?」



この男は、あろうことかまたわたしの唇にかぶりついてきた。まるで黙れ、とでも言うように。カシャン、フォークがわたしの手から滑り落ちて、お皿に落ちる音がした。薄っすら瞳を開けると、これまたニヤリと笑うターレスと目が合った。ああ、ずるい。そう思ってわたしはまた瞼を下ろす。そして、ゆっくりと唇が離れると、わたしは文句のひとつでも言ってやろうと思ったら、じっとターレスに瞳を覗かれた。



「・・・?、なに?」


「名前、それ、」


「え?」


「マスカラ、してんだろ。」


「え?うん、してるけど・・・。」


「俺と二人の時は化粧やめろっつっただろ。」


「だ、だって・・・・。」


「別に出かけるときはダメって言ってねぇんだから、部屋にいるときぐらいお前のままでいろよ。」


「・・・・・・」


「わかったか?」


「・・・ターレスに、」


「あん?」


「・・・・ターレスに、少しでも可愛く見せようと思ったんだけど・・・、」


「は」


「やっぱり、まだ似合わないかぁ。」





そう言って名前が力なく笑う。なんだよ、今日は不意打ちばっかりじゃねぇか。ドクドクとうるさくなる心臓に、俺は気づかないふりをしてべつに似合わねぇとは言ってねぇよ、と名前をなだめた。



「え、うそ。」


「まず言ってねぇだろ、今。」



「だ、だって前ターレスが・・・!」


「俺が?」


「・・・・わたしに、化粧、似合わないって言ってたから・・・・。」


「あ?」



俺はゆっくりと記憶を辿った。あァ、確か名前が初めて俺の前で化粧した時だ。夏祭りで、浴衣姿の名前に俺はドキドキしてたっけな。それなのに、いつも以上に可愛くなってやがってよ。ウゼェんだよ、名前のくせに俺をドキドキさせるなんて。


なに泣きそうな顔になってんだよ、あんなの嘘に決まってんだろ。バカでアホでガキの頃の俺は素直になることにかっこ悪さを感じてたんだ。だから、もうそんな顔すんなって。って言っても、そんなお前すら愛おしいなんて。なんでだろうな。相変わらず俺はバカのままなのかもしれねぇ。




「名前のスッピン、知ってるの俺だけだろ。」


「え・・・?」



突然の俺の言葉に驚いた表情を見せた名前。俺は名前の髪の毛に手を伸ばして、ゆっくりすいてやった。



「他の奴は知らない、名前の顔を俺が知ってる。」


「・・・」


「だからできるだけ、見せてほしいんだよ。」




悪いか。照れくさくて、最後は悪態を吐く。だけど、それでもみるみるうちにニッコリと笑顔になった名前に、こっちまで嬉しくなるだなんて。どうやら俺は、自分が気づいているより名前のことが好きなのかもしれない。




思いが溢れていく




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かかおちゃんから頂いちゃいました、ターレスゆめです!すっぴん!!そんなに見たいなら好きなだk((
こんな素敵な彼に言われたら一生すっぴんで居るしかないじゃないの・・・、まさか、かかおちゃん確信犯!?ああ違いますねすみませんでしたかめはめ波打つ体勢取らないで。イケメンで優しくて照れ屋なレタスくんをごちそうさ・・・じゃなかった、ありがとうございました!

これからもよろしくお願いします!!