今宵、あたしは健やかに眠っていた。だが、突然ばちばちと数回ほど頬っぺたを叩かれ、あたしは目を開ける。そして静かに瞼を閉じた。…なんか横に白いの居たし。
白いのとは言わずもがな居候のフリーザである。恐らく尾で叩いたのだろう。
ここで何らかの反応を示したら最後、面倒ごとがあたしの身に降りかかってくるのは目に見えている。だからあたしは迷わずシカトを決め込んだ。…しかし、再び夢の続きを歩もうとした時、あたしのお腹辺りにやたら重い物体がのし掛かってきたのだ。


「おはよう、軟弱地球人の名前さん?朝ですよ、さっさと起きなさい!!」


そして開口一番がこれである。フリーザのこのふざけた態度と発言に、思わず殺虫剤を散布してやりたくなった。…いや、かなり無謀で返り討ち決定だけどさ。でもあたしは諦めない。近々ホームセンターで殺虫剤を大量に購入しようと思う。


「まだ、眠い…んだけど……」
「お目覚めのところ悪いのですが、少々小腹がすきましてね。早速ですがこの私に何か美味しいものを作って頂けませんか?あとワインもお願いしますよ」
「え…ワイ、ン……?今、何時なの?」


やべ、かなり寝過ぎた?と、思ったがどうやらそれはあたしの勘違いだったらしい。


「ほほっ、今は朝の五時ですよ」
「ざけんな、フリーザ!勝手に食ってろ」


吐き捨てるように言ってから、足でフリーザを退かし布団に潜り込む。流石に五時はねーよ。何なの、至上最悪と言っても過言ではないこの起こされ方は。
しかも何だ?そのワインとかって…。誰のお金で買ってると思っているんだ。
……ええいっ、こいつの食費と酒代の所為で、マイ財布と元々空に近い通帳の中身が寂しくなるなんて考えたくもないわ!


「…この私にそんな口を訊いているのは恐らく名前さんぐらいでしょうね」
「…ああ、そう」
「早く起きないと殺しますよ」
「…つか、まだ五時なんだけど?宇宙人は早起きが好きなの?それともただ食い意地がはってるだけ?馬鹿ですか?」
「黙りなさい!!!」


そう言ったフリーザはあたしのお腹を踏んづけてきた。ぐえっ、苦しい。骨が軋む!てかそっちの趣味ないんだけど!
…え、何なのこれ?嫌がらせ?朝ごはんくらい勝手に一人で食べればいいじゃん!


「…で、こんな早くから何なんですか?本当に勘弁してほしいんだけど」


…と、思うも、こんな毛のない凶暴な宇宙人に殺されるのは真っ平御免なので、あたしはのそのそと起き上がる。
某マンションで殺人事件!女性が宇宙人に殺害される!?宇宙人は存在するのか!
…なんて三面記事に載った日には情けなさすぎて死んでも死にきれない。


「…おや?聞いてなかったのですか、名前さん。ならもう一度だけ言ってあげますよ、私は優しい男ですからね。少々小腹が空いたんでこの私に何か美味しいものを作り、ワインを早急に用意しなさい」


なにその上から目線。そして何が「私は優しい」だ。本当に優しい人はこんな朝早くに叩き起こしたりはしない。
しかし、ここで起きなければフリーザの機嫌を損ねてしまうのも事実。あたしは大きな溜息を吐きキッチンへ向かった。あー、めんどくさい。ワインなんてあったっけ?


「…と、言うか手軽なものでもいい?材料少ないんだよね」
「ええ、構いませんよ。名前さんの作るものは何でも美味しいですからね。早急に頼みますよ、名前さん」
「えっ、美味しい?」
「美味しいですよ」
「…嘘、本当に?」
「貴女…少ししつこいですね。美味しいと言っているではありませんか。少なくとも私は好きですよ。生意気な貴女もね」


まさかあのフリーザの口からそんな言葉が吐き出さられるとは思わなかった。
あたしはこっそり視線を合わせないようにフリーザを見てみると、フリーザは何事もなかったかのようにリモコンに手を伸ばしていた。まったく…そんな言葉、いったいどこで覚えてきたのか。ああ、きゅんと甘く高鳴る胸が今は憎くて仕方ない。
よし!今日は奮発してフリーザに少し高めのワインを買ってきてあげよう。

(それなりに幸せ)



りこちゃんからこっそり貰ってきました!フリーザ様の素敵なお話です〜〜!!とりあえずフリーザ様がイケメンすぎて五回くらい読み返しましたこの人のデレはやばいです。「生意気な貴女もね」という台詞にノックダウン!!こんな素敵なフリーザ様とお話をありがとうございました!