士官学校生徒AU




翌朝。予期せぬ来訪者に、アリスは目を見開いた。扉の前には昨日の士官学校の首席である、小鳥遊が居たのである。小鳥遊はアリスを視認するなり足を揃えて張り切って敬礼したが、状況が飲み込めないアリスは敬礼で返すばかりかまともな返事も出来ないで、気の抜けた炭酸水のような声で返事をした。

「…た、小鳥遊?」
「はいっ、覚えて頂けてて光栄です!」
「お前、士官学校は」
「……アリスさん。ロリナ殿から、何もお聞きになられてない?」

質疑を質疑で返されて、分からずアリスは眉を顰めた。どうやら小鳥遊の来訪は、師であるロリナと関与があるらしい。アリスが素直に首を横に振り肯定すると、小鳥遊も意外そうな顔をした。何はともあれ談笑でも、と云う訳には無論行かず、アリスは踵をめぐらせて家の中を進む。所在なさげな小鳥遊にも声をかけ、革靴を脱ぎ上がるよう促した。それに従う小鳥遊を見もせずに、アリスはロリナの姿を捜す。
真摯に手を洗っているロリナの姿を視認すると、アリスは彼に声をかける。ロリナは騒々しさに不機嫌そうな顔色を示したが、アリスの方を見もしない。石鹸と水で執拗に洗浄する自分の手を眺めたままだ。隣のエディスは小鳥遊の顔を見ても驚きはしていない。

「師匠、昨日の…士官学校生が」
『わしが呼んだ』
「へ……」
『交流を持つ事で、どちらの成長にも繋がると思うてな。貴様も昨日、悪くはなさそうだった』
「……は、はあ」

どうやらロリナは切磋琢磨の為、小鳥遊を呼んだらしかった。しかしアリスはロリナのそれ以上の私的な理由を解りはせず、ただ喜悦も憤慨も出来ないで、微妙な反応を返した。どう反応して良いものか自分でも解らなかったのである。
ロリナは石鹸を置き、水でよく注ぐ。真新しい浴布で自分の手を拭い水気を取ると、白手套を嵌めた。漸くアリスと後ろの小鳥遊を見る。

『士官学校には、一ヶ月程の休暇を貰うよう云っておいた』
「……そ、そんなのが可能なんですか」
『そやつは長期間士官学校に行かずとも、優秀だ。向こうも異論はないそうだ』
「…しかし、小鳥遊の方が迷惑じゃあ」
「俺は寧ろ望外の幸いです、アリスさんと向上出来るなら!」
「………」
『決まりだな。わしはもう行く』

昨日の電話はどうやら士官学校と小鳥遊への電話らしかった。士官学校がそんなものを許可するだろうかとアリスは訝しんだが、ロリナは軍が関係するあらゆるものに顔が利く。青と云えば赤でも青にするような彼の権力では、異論があっても云えなかったのだろうとアリスは推断した。恐ろしく傍若無人な師匠だと、アリスは改めて認識させられる。
エディスを横に連れながら玄関に向かうロリナの背中姿を見送って、アリスは小鳥遊を見上げた。鼻筋が綺麗に通った横顔はアリスの視線に気が付くと、宜しくお願い致しますと嬉しげに相好を崩した。アリスは苦笑いで返す他はない。

「ところで、ロリナ殿は大分入念に手を洗われるんですね」
「ああ…師匠は潔癖症なんだ」
「そうなんですか。俺もその嫌いはあるかもしれませんが」
「…触るのが嫌、とかか」
「そうですね。基本的に好ましくは」

淡々と述べられる彼の言葉を聞き、アリスは昨日のやり取りを思い出す。握手もして、夕餉の際も接触はあったように思われる。潔癖症とは中々癖があるものとアリスはロリナの平生からの態度を思い出し、軽微に眉を下げた。

「なら、昨日は握手を求めて悪かった」
「え。アリスさんは全然大丈夫どころか大歓迎です、至極嬉しかったので!」
「そう云うものか? 何も変わらんぞ」
「大違いです、貴方なら俺から触れた――」
「わ、解った解った」

熱心に紡がれようとするそれを最後まで聞こうとはせず、アリスは呆れて小鳥遊の眼前に右手を差し出して制した。小鳥遊は不満げではあったが、言葉を止める。本当随分質朴だ、とアリスは溜め息を吐きそうになった。無論吐いてしまえば失礼に当たるとは解ったので、吐きはしなかったが。
小鳥遊は清新さを感じるアリスの横顔を繁繁と眺め、そうして調子を弾ませた声で紡ぐ。

「アリスさん、それではお願い致します」
「何を?」

疑問で返すと、小鳥遊はさも当然そうに両手で剣を構える仕草をし、左に泣き黒子のある目を細くした。

「お手合わせ、です」





小鳥遊はそれから、毎日アリスの元を訪ねた。アリスはそれを全面的に煙たがったかと云えば、それはそれで嘘になる。小鳥遊のあの盲目と形容も出来るような態度は確かに好ましくはなかったが、しかし年下とは云え同年代の同性とこうして話せるのは新鮮で、決して悪い気はしなかった。相手が敬語で畏まるので、友人と云った感じはさほど持てはしなかったが。更には片意地で、アリス以外には喧嘩腰で冷徹なのも後に知る。それでも、ロリナとエディス、軍人以外との交遊がなかったアリスからしたらこの出会いは大きなものだった。
しかし、アリスの時間は彼に取られ、思うような行動は出来なくなった。つまり、人目を憚って行うべき言語の習得が、出来なくなった。彼は言わば監視者で、士官学校生徒である彼に日本を不法に出ようとしている事を知られてしまってはまずいと、アリスは重々理解していた。お国を敬愛する身分であるのだから。

アリスが小鳥遊を完全に好く事が出来なかった点は、此処にある。ジンゴイズムである小鳥遊とは、反りが合う筈もなかった。好戦的な彼と比べ、アリスはどちらかと云えば好ましくない方だったのだから。アリスは小鳥遊のそのような点に、違和感を生じさせた。時代の風潮で仕方がない事なのかも知れないが、それを単簡に受け入れられる程、アリスも全人ではなかった。




アリスと小鳥遊が共に夕餉を食べようと、夕暮れの賑やかしい通りを歩いていた時の事である。アリスは海軍兵学校の首席と出会う事になる。

「小鳥遊、お前士官学校を特別免除されてるんだってな」

そう云って近付いて来たのは、海軍兵学校の制服である真っ白な軍服を着た、一人の男子生徒であった。白の軍服、金の装飾に黒の短靴。帯刀された軍刀と、両手に嵌められた白手套。陸軍の制服と違い、華やかさがあった。彼は猫毛の髪を揺らし、不敵に目を細めたままアリスへ視線を遣った。小鳥遊の顔が、途端嫌悪感を丸出しにする。

「どうも、アリスさん…ですよね。俺は五百蔵(いおろい)と申します」
「あ、ああ」
「海軍兵学校の、一応そいつと同じ首席ですよ」

五百蔵は白手套を嵌めたまま右手を差し出し、握手を求めた。アリスは一瞬躊躇したが、右手を差し出して彼の手を握る。小鳥遊の咎めるような視線が五百蔵に行くものなので、アリスはもしや不仲かと内心で考えた。五百蔵はアリスから手を離すと、冷罵するかのような顔で小鳥遊を見る。小鳥遊の表情は平生の鷹揚そうなものでなく、居丈高な色をしていた。

「驚いたな。そんな事が許されるなんて、なあ?」
「貴様には関係ない」
「突っ掛かるなよ。俺は只、お前がそんなにもアリスさんを愛しく思うなんてなと」
「五百蔵!」
「ま、何でも良いが。あまり懐いて嫌われるなよ、それじゃあな、犬」

今にも斬り掛かって行きそうな小鳥遊を飄々とした態度であしらい、五百蔵はアリスに挨拶すると踵をめぐらせて居なくなる。どうやら用件がある訳でなく、単に小鳥遊をからかいに来たようである。アリスが隣の小鳥遊を見上げると、未だ非常に嫌そうな顔をしていた。海軍と陸軍の不仲さはよく聞くが、なれば士官学校の首席同士、衝突もまた多いのだろうとアリスは推断する。

「アリスさん、すみません」
「何でお前が謝るんだ」
「あ、何となく……」
「別に謝られるような事はない。…それより」
「はい」
「犬とは、また的を得た称号だ」

納得である。考えれば、見えない耳や尻尾が小鳥遊には生えているような錯覚すら起こる。アリスは頷き、それから店に向かって足を動かした。桃色の着物を着た女児が軍服姿の小鳥遊を、憧憬の眼差しで見上げる。慌てて小鳥遊はアリスの後を追った。

「お、俺は犬ではありません」
「犬だろ」
「違う」
「違わない」
「アリスさんっ」
「待て」

アリスが振り向き小鳥遊の前に右手を伸ばして命じると、小鳥遊が思わず怯んで止まる。そんな彼の様子を満足そうに見ては柔らかく笑うものだから、小鳥遊の顔が赤くなった。この時はもうアリスへの恋慕の情には自覚もあり、思わずアリスに聞こえないように、呟く。小鳥遊は恐らく、畏敬したからこそ、話すまでは知らなかったアリスの様々な側面に直ぐ惹かれた。そして、愛した。

「ほら、犬じゃないか」

士官学校を休む中でアリスへ邪な感情を持ったのに罪悪感がなかった訳ではない。しかし、どうする事も出来ない激情であった。小鳥遊が吐く小さな言葉は、前に向き直ったアリスには届かない。

「…襲ってしまいますよ」

今すぐアリスを後ろから抱きしめて唇を重ねてしまいたい欲情を、小鳥遊は抑えた。





翌日、アリスはロリナから小鳥遊の家へ水菓子を持って行くように命じられた。新鮮なそれの数個が白い袋に入れられており、差し出されたアリスは目を何度か瞬かせる。何故水菓子を、だとかどうして水菓子があるのだとか。ロリナは足を組んだまま、事もなげに答えを紡ぐ。

『貰うた。そんなに要らん』
「はあ…」
『貴様も相手に平生の礼はせよ。士官学校を休んでいるのは事実だ』

それはアリス自身が望んだものではなかったが、しかしまた事実でもあった。自分が居るからこそ、彼の貴重な時間は引き裂かれている。案外、小鳥遊も実は迷惑ではあるのだが、そんなそぶりを見せないだけかも知れなかった、総司令官の手前。
そう思うと差し入れは当然のように思う。アリスが領諾すると、ロリナは小鳥遊の家の地図を書いて差し出した。士官学校生徒も兵学校生徒も集団行動の為に学校に留まり普段家には居ないのだが、免除されている小鳥遊は家に居るのだと云う。アリスは地図で大体の位置を確認し、家に向かった。


ロリナが小鳥遊に休みを提案したのは、勿論切磋琢磨もあっただろうが本当の理由は別にある。その実は総司令官としてではなく、アリスの保護者としての提案であった。親代わりを何年かすると情も生まれた。学校に行ってないが為、学友が居ないアリスを気にもかけた。我が儘も贅沢も何も云わないが、内心では欲しているのではないかと。そんな中、小鳥遊の存在は丁度良かった。品行方正で、素行は良く、同年代の同性と条件に当て嵌まる。加えて、自らアリスをよく慕う。これなら良いと感じた。そして事実、上手く行っている。アリスに聞くと、今まではなかった豊富な話題が返って来るようになった。人間の成長は他者と混じり合ってこそだと考えるロリナは、実に満足した。
その心は、誰にも云わない。云っては決して良い顔はされないからだ。親の立場を優先する事は立場上良くはなかったし、すべきではないとも解っていた。しかし、気付けばしていた。その内心が解るのは、唯エディスだけである。彼女は咎めもせず、じっとアリスを見た。その瞳が小さな哀しみを帯び出したのに、ロリナは気付かない。妹のようなエディスがアリスを恋慕しているのは、彼女以外は知らなかったのである。彼女はアリスが他者と関係を持ち出したのが、哀しくて堪らなかった。小鳥遊に嫉妬すら抱いた。同性であるから何の問題も間違いもある訳ないとは思いつつ、それでも不安で仕方がなかった。


ある日エディスはアリスに聞いた事がある。小鳥遊はどんな人物か、と。アリスはその質問の真意が解らなかったようで、反応が薄かった。

「…小鳥遊? どうして」
「素敵な殿方か、気になったのですわ」

するとアリスはエディスの言葉を違った風に解釈し、未だ幼く小さなエディスの両肩を掴んだ。エディスは驚愕してアリスを見たが、アリスの口から紡がれた言葉が嬉しくもあった。予想したものとは違う反応ではあったが、それは大した問題ではない。

「ま、未だ早い」
「…アリス様?」
「それに、エディスの相手は俺より強い相手でなければ駄目だ」
「あの」
「もし仮に意中の人物が出来ても、先ず俺に見せに来るんだぞ。師匠でも良いが」

彼は勘違いしたらしい。エディスは真摯に見つめてくるアリスを見て、両の頬を仄かに色付かせた。アリスの態度は自分の妹のような彼女が悪い男に引っ掛かってはいけないとの、兄のようなものではあったが、エディスは過保護な彼が嬉しかった。自分の可笑しな銀髪も目の色も、綺麗だと云ってくれた。強くて優しくて、魅力的な殿方だと思う。彼のような存在が居て、どうしてぱっと出の士官学校生に惹かれようか。エディスは想いを含有させて、アリスに向かって笑んだ。

「………なら、アリス様はもっともっと強くなられて下さいね」

この世界に、アリス以上の兵(つわもの)が居ない位に、と。





予期せぬアリスの来訪に、小鳥遊はひたすら驚いた。まさか彼から自宅に来てくれるなんて思わずに、信じられず凝視してしまった程。アリスの方は、軍服しか見なかった小鳥遊の和服姿に驚いた。
縹色の和服。それはアリスの目に、よく似合っているように見えた。彼も和服を着衣するのかと意外性に反応は遅れたが、仕立ての良さそうなそれは、若者らしく清新な小鳥遊と合っている。普段は衿で隠れている首を、無遠慮に眺めた。矢張りこうあっても男性らしい体格で、アリスは若干妬んだ。さっぱりと切られた短髪もよく似合うし、泣き黒子は魅力を引き立てるようだ。年下のくせに、とアリスはどうも気に喰わず、小鳥遊から視線を逸らす。すると黒猫が抱き抱えられている事に、今更気が付いた。鳴いて、少し暴れる。首輪の鈴が鳴った。

「あ、こらダイナ」
「……ダイナ?」
「こいつの名前です」
「俺の日本刀と同じだ」

屈んで、アリスが猫であるダイナの顎を触る。ダイナは気持ちよさげに目を細め、高い声で一声。微笑んでダイナの頭を撫でるアリスの顔を見て、小鳥遊は自分の顔に熱が溜まるのを感じた。紛らわすように話題を振る。

「お揃いですね」
「ん? ああ、そうだな」

アリスは口元に柔らかく笑みを浮かべた。何気ない表情であり、自分を一士官学校生徒として慕う年下への何気ない微笑みだとは解ってる。それでもアリスを慕う気持ちが日に日に募る小鳥遊にしたら、それはご褒美で、意地悪でもあった。恋仲であるなら未だしも、無自覚だからこそ、無防備に笑顔を振り撒いてみせる彼の何たる意地悪な事か。
唇を、奪ってしまおうか。小鳥遊が近付こうと一歩を踏み出したその時だ。

「兄上。アリスさんですか?」
「っ!」

小鳥遊はその声に驚愕し、思わず声を出しそうになったが何とか堪え、急いで後ろを振り向いた。そこには胸までの三つ編みを左右に二つ無造作に垂らした妹が居て、此処が自宅であった事を思い出す。妹である彼女は兄の気持ちなどは解らずに、アリスの方を見つめた。大きくて抑揚のない双眸と、アリスの目が合う。淡い鴇色の和服を着衣した少女であった。年齢は、エディスよりは多少上に見える程。分厚い退黄色の本を大事そうに抱えている。

「アリスさん、初めまして。妹のヴァイオレットと申します。兄上が何時もお世話になって迷惑を」
「あ…こちらこそお世話になってと云うか、迷惑を」
「否、兄上は猪突猛進ですのでさぞ…」
「ヴァイオレット、お前は余計な口は挟まないで良い」

乏まれて気まずくなったのか、困った顔で小鳥遊が云う。ヴァイオレットは変わらず無表情なままで、謝罪の積りか一礼を見せた。ヴァイオレットとまた目が合う。深い暗闇のような目の色は、小鳥遊と同じだった。若干顔立ちも似ていると思う。成る程確かに兄妹か、とアリスは納得した。彼女は置かれた下駄を履き、小鳥遊を見上げる。

「兄上、私は今から図書館に行きます」
「解った。しかし本ばかり読んでても、学業はどうした」
「……。行って来ます」

ヴァイオレットは小鳥遊から視線を外し、アリスに礼をすると玄関を開けて下駄の音をさせながら外に出る。
彼女の小さな背中を見送った後、小鳥遊は溜め息を吐いた。困り果てたよう、頭を押さえる。

「…妹は本ばかり読んで、学生なのに学業をしません」
「読書は悪くないと思うが」
「限度があります。お陰で優秀だった成績も言語や歴史以外は非道い。あれでは先行き不安で」
「女性だから別に」
「家事も壊滅的で。洗濯も裁縫も料理も見られたものじゃあない。しかもあの五百蔵を慕うときてる」

そうと乏しめる小鳥遊の顔はさほど本気にも見えず、何だかんだ小鳥遊は妹が好きなのだとアリスは思う。愛されている彼女を羨望する気持ちがあったかは、自分でも解らない。只、何れにせよ良く思ったのは確かだ。アリスはそこで水菓子の存在を思い出し、それを渡した。小鳥遊は大仰に、有り難がって頂いた。
小鳥遊の手中のダイナを見て、アリスはもう一度猫に触れる。好きなのだろうかと小鳥遊が思ったその時だ。アリスは自分の唇を、猫の鼻に落とした。小鳥遊の動きが停止する。その間にアリスは姿勢を戻していた。

「じゃあ、お邪魔したな」
「あ…ええ」
「またな、ダイナ」

アリスはダイナに手を振って、玄関から出て行く。引き戸が閉まる音がして、アリスの足音が遠ざかる。軽微に聞こえる時計の針の音を聞きながら、小鳥遊は暫くその場に佇んだ。ダイナが鳴くと漸く覚醒したようで、息を吐く。空いた左手で髪を掻き上げた。

「…こんなに、猫になりたいと思ったのは初めてだ」

そうしてダイナの鼻に、自分も唇を落とした。アリスの唇が先程触れた箇所である。
実際のアリスとは出来ない代りとして行った間接的なそれに、少なからず心地良さを覚えたのは事実であった。唇が離れるとダイナは高く鳴き、手から器用に離れて我が物顔で居間の方へと向かう。居間の方からは小鳥遊を呼ぶ姉の声が聞こえる。揺れる尻尾を見送りながら、我ながら女々しい、と自嘲をした。


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