「…聞いてますか、エバさん?」

 エバと呼ばれた青年は、その時初めて自分の恋人が名前を呼んでいる事に気が付いた。考え事をしていた事を悟られてはしまわないようにと、慌ててエバは本から顔を上げ、それから困った顔で笑い、何気ない顔で嘘を吐いた。これは彼が半年以上この恋人と交際してきた中で取得したもので、それは自己を守る為の手段に他ならなかった。

「…悪い、本に集中していて。何だって?」
「……。さっきの男と云い、この間の男と云い。よく貴方は絡まれますね」
「偶然だろ…。それにさっきの人は、鞄を拾ってくれただけだ」
「それにしては長く話し込んでいましたが?」

 恋人の表情が多少険しくなったのを、エバは見逃さなかった。彼等は留学に来る前から交流があり、従って予てから深い仲ではあったのだが、エバは彼のこのような強い束縛心が得意ではなかった。それをかつて友人に話したら、「贅沢な話だ」と云われた事がある。自分は嫉妬をされたくてもされないのだと。愛されている証拠なのだと友人は羨むように口にした。
 勿論恋人が自分の事を誰よりも愛してくれているのはよくよく解っていたし、それは至極真っ当な事で、彼等の「恋仲」という関係上全く問題はないのだが、然しそれに窮屈さを感じるのも、矢張り事実ではあった。その感情の疚しさも、実のところエバは解っていた。…嫉妬を煙たがる度に、自分の愛が彼の愛より大きくはないのだと、その事を痛い程に認識した。然しエバは彼を決して嫌いではなかったし、長年の付き合いから情だって持っていた。だから嫌われたくないのも確かな感情だったので、エバは正直に話す事にした。

「実は彼が、俺をアリス、と」
「アリス? …またですか。前の男も云ってましたね」
「そっくりさんでも居るんだろうか」
「新手のナンパでは? …貴方、隙があるから」
「隙って…」

 エバが反論しようとした時、恋人がエバの唇に唇をそっと重ねた。そして目が合うと、そうして当然だとでも云うように、右手をエバの服の下に潜り込ませる。エバの身体が緊張したように動き、それから両手で恋人の肩を持って制した。

「…今日は駄目」
「何で? 何時もしているのに」
「…明日提出のレポートがある…」
「俺が手伝いますよ」
「…それにアラン何時もゴム着けないだろ。あれ凄く厭…」
「…今日は着けます」
「嘘…」

 エバの声がその続きを紡ぐ事はなく、アランと呼ばれた青年の唇が再び重なった。身体への愛撫を受けながら、ああこれは今日も着けないだろうなとエバは思ったが、相手の舌が自分の口内に乱暴に入って来るのが気持ち良くて、彼に身体を全て委ねる事にした。
 頭の片隅で莫迦みたいな事をしていると思ったが、それでもアランの背中に回された両手は離れたくないように、しっかりと服を握った。






「昨日アリスに会った」

 僕がそう云うと、ジャバウォックは些か驚いたような顔をした。僕が会わないと云ったから、恐らく今回の人生では一生会う事がないと思ったのだろう。然しその顔は直ぐに納得したようなものへと変わり、それから「だろうね」なんて信用のならない言葉を云った。
 ジャバウォックは売店で買って来たであろうサンドウィッチの袋を開けながら、

「何処で会ったの。どうだった?」
「バイトをしようと思っているレストランで。…僕の事を覚えていた」
「嘘」
「正しくは名前と顔だけ。僕を見てラビ、と」

 何時もは紅茶に何を入れる事もしないが、今日は角砂糖を入れたい気分だった。だからジャバウォックの顔を見ないまま、取ってきた角砂糖の包みを開け、深い色をした紅茶の中に真っ白な雪の固まりを入れる。
 次にジャバウォックが何を云うか、大体が見当がついた。だからこそ制するべきかと思ったが、それをしなかったのは、矢張り僕が何かを期待しているからだろうか。制される事のなかった彼の言葉は、至って自然に僕の元に届いた。

「俺の事は覚えてなかったのに。…良い機会なんじゃない?」
「何の?」
「今回は障害なんてあってないようなものだ。手に入れちゃいなよ」
「…恋人が居る。それも嫉妬深くて、前世でもアリスと関係があった」
「じゃあ諦めるんだ?」

 厭な言葉だった。そしてそれを聞いて直ぐ、本当のラビだったらどうしたろうかと思ってしまった。…ラビは女王以外に跪く事はなかったから、多分それ以外の者には平気で非道い事をするんだろう。でもそれを僕がするんだろうか? 他者の手から彼を奪うなんて真似を?
 …少し考えて、直ぐに莫迦らしい事だと思い直す。何もアリスから直接「奪ってくれ」と云われた訳でもなく、彼の視線が僕の身体の上を妖精が踊るように滑っただけなのに。例え僕が彼を奪ったとして、今彼の隣に居る者よりも僕は彼を幸せに出来ると断言出来るんだろうか? …2人の間には、最早誰も入り込む余地なんてないんじゃないだろうか。
 生まれ変わって変化したものはないと思ったが、どうやら若干弱気になったらしい。それが解ったのか、ジャバウォックの顔が僕を多少嘲笑うようなものに変わる。そうして彼が何かを云いかけたその時だ。

「…ラビ、また会ったな」

 ジャバウォックが至極驚いた顔をした。恐らく僕もそのような顔をしただろう。声のした方の左を見ると、そこには黒色のバッグを肩にかけたアリスが居た。アリスはジャバウォックの方を見て、思わずといったように口を少しだけ開いたが、直ぐに僕に視線を戻す。そうして僕が言葉を口にする前に、再び彼が口を開く。

「昨日あのレストランのバイトの面接に来たんだって。聞いたよ」
「ああ、…ええと、」
「…悪い。邪魔だったか」
「そんな事…」

 ジャバウォックが立ち上がり、「教室に行かないと」なんてわざとらしく云って、食べかけのサンドウィッチを片手に持つ。そうして僕達に軽めの別れの言葉を放ち、僕にだけ見えるように片目を瞑った。…それが何の意味をなすのかは生憎僕には解らなかったが、「座っても?」と云うアリスの言葉に直ぐに意識が向けられて、僕は「ああ」と洒落っ気のない返事をした。
 アリスはさきまでジャバウォックが座っていた席に座り、

「…さっきの奴、ラビと一緒で、俺の事を前に『アリス』と。知り合いだったんだな」
「…アリスという響きに覚えは?」
「? …全く。俺に似ている奴が?」

 アリスはどうやら自分の事を本当に覚えていないらしい。…僕の事は覚えていたのに、何とも可笑しな話だった。
 然し昨日の偶然は「只の偶然」で片付くが、今こうして彼と向き合い話すのは、彼が選んだ選択だった。何処か期待をする。かつてアリスは人に自ら関わりに行くタイプの人間ではなかったからだ。僕は少し微笑んで、

「…そうだね。よく似ていた」
「どんな奴?」
「…君みたいに、綺麗で、実直で、それと少し不器用」

 アリスの顔を見る。…彼の顔が、花が色付くように、美しく赤に染まって行く。その何でもない様が、酷く懐かしかった。かつての彼が、僕の前で頬を嬉しそうに紅潮させたのは、何時が最後だったか。彼のその顔が、唯一人女王のものとなった時、僕は二度と彼のそのような顔を見る事がなかった。…こうしてもう一度見られる日が来るなんて、想像すらしなかった事だ。
 アリスは顔を隠すように、口元に右手をあてて、

「き、綺麗って。…殆ど初めての奴にそんな事を云うなんて、軟派だな」
「滅多に云わない」
「どうだか。慣れてそうだ」

 アリスが冗談めかしながら、若干咎めるような事を云う。昔僕が彼に綺麗だと云った事は、最早覚えていないのだろう。同時に恐らく、僕の事を詰った記憶も、彼の中には一切ない。故に彼はアリスだがアリスではなく、また僕もかつてのラビではない。そう思うと胸を何か薔薇の棘のようなものが刺した心地がした。然し僕はそれに気付かないようにした。
 アリスはもうその事に言及する事はなく、

「…ところで、連絡行っただろ。これからは一緒のバイト先だ。宜しく」
「ああ、…アリスは何曜日に入れているの」
「…何で?」
「一緒の日があれば楽しいと思って」

 咄嗟に出た言葉だった。アリスは一瞬嬉しそうな顔をしたが、然し直ぐに顔を翳らせて、それから「昨日と、それから週末に」と云った。彼が浮かない顔をした理由は最初は解らなかったが、然し直ぐに解る。彼は言い訳するようにその言葉を口にした。

「…アランっていう奴が、バイトの終わりに迎えに来るんだけど」
「…ああ、昨日の」
「少し嫉妬深いんだ。だからラビに良い態度は取らないかも知れないけど…、…あまり気にしないで欲しい」

 その言葉の真意とは、果たして何だろうか。言葉の通りに受け取るべきか、それとも裏に隠された意味を掬って解釈するべきか? 思えば何時も、アリスはそのままの感情を素直に言葉として吐露する事は、あまり無かったではないだろうか。
 そう思うと少し意地悪を云いたくなった。それを聞いた彼がどんな顔をして、どんな風な言葉を云うのかが知りたくなったのだ。
 僕は何て事ないような顔をして、

「愛されているんだね。羨ましいよ」
「え…。…そんな事…、」

 彼は云い淀み、何を云って良いのか解らないというような顔をした。パズルの絵柄が間違える事のないように、次のピースを探しているような、そんな顔だ。僕はそれに自尊心が満たされるような心地がした。これが何も初めての人生という訳ではないと云うに、何と小さくて醜悪で愚かなんだろう。
 僕が次の言葉を紡ぐと、彼は少し安堵したような顔をした。

「…何てね。からかってごめんね」
「そんな…」
「君に恋人が居なければ良かったのにと思って。つい意地悪を」

 本心だった。アリスはその言葉が信じられないと云うように、目に小さな輝きを映していた。…そんなに嬉しそうな顔をするのなら、どうして僕ではない他の誰かに愛の言葉を耳元で囁かせて、身体を好きにさせるんだろう。何故愛されたいと思える人を、待っていてくれはしなかったのだろう。何て、そんな事を云うのは意地悪だろうか。彼は自分が心から愛せる人間が自分の前に現れるという確信は何時だって得られなかったし、その間の期間はどうしようもなく寂しかった。それを詰る事など、恐らく誰にも出来ないんだろう。
 彼はアリスではなく1人のエバという人間なのに、その事実を忘れてアリスと名を呼び、彼の喉元に銀色の銃口を突き付けたくなる。思い出すものはないだろうか? 思い至るものはないだろうか? ……何故ジャバウォックとグリムは何を欠く事もなく出会えたのに、どうして僕等は何時も擦れ違ってしまうのか。どうして僕だけが覚えていて、僕だけが全て足りているのに何もかもが足りないのか。
 僕は立ち上がり、そして座ったままでいるエバに微笑んだ。

「またバイトで宜しくね」

 彼は嬉しそうに、「ああ」と云った。






 それから1月が経ったくらいの事だろうか。時計は22時を過ぎた頃の時刻を指していた。何時も通り僕とアリスが更衣室で少し会話をして、間もなく彼の恋人が迎えに来る。そして僕は1人で帰路に着く。
 僕は鞄を手に取り、ロッカーの扉を閉めると、

「それじゃあまた」
「あ、ラビ。…その、今日はアランが来ないんだ。都合がつかないと」
「…そう。送ろうか?」
「いや、…ラビが良ければ、」

 彼がそこで言葉を区切る。僕を見る彼の目は確かにアリスの目だったが、それは少しだけ、今ばかりは違う目の形をしているような気がした。それはこの新たな人生で、かつての人生で知る事のなかった世の事を、知ってしまった事が原因なのか。それとも記憶が無いのなら、彼はもう全くの別人であると、云ってしまっても良いのだろうか。僕は未だその答えが解らなかった。

「お前の部屋に、行っても良いかな」





 僕の部屋に来た彼は、少し珍しそうに部屋の中を見渡している。物に対する執着心は元々薄かったが、ラビという名前を親から正しく授かる事になってから、益々物執心する事がなくなった。そのような部屋をジャバウォックが見ると、「寂しい部屋だね」と云った。彼とグリムの部屋にも一度招かれた事があったが変わらず物は多く、然しグリムのお陰で物は溢れる事もなく、部屋を綺麗に楽しく飾っていた。楽しそうな人生だった。

「鞄は適当に置いて良いよ」
「ああ、……物があまり無いんだな」
「興味がなくてね」

 物で人は幸福にならないから、そう云いかけて直ぐにやめた。僕は鞄を掛け、それからカップを2つ用意する。お湯を沸かしていると、後ろからアリスが、それじゃあ、と云った。

「それじゃあ何に、興味があるんだ」

 ーー僕が興味があるものとは果たして何だろうか。以前学ぶ事のなかった知識を身に付けるのは確かに新鮮で楽しいが、然しこの人生全てを捧げても良いと思える程の情熱がある訳でもない。それではまた銃を握る事に興味が? それなら僕は恐らく此処に居ない。
 物に興味がなく、この世が何で出来ているか知りたいというような知的好奇心も特に無い。夢だって勿論ない。それでは何の為に僕は今生きているんだろう。記憶を持ったままで生まれ直した意味とは果たして何であるんだろう?
 以前生まれた意味すら、解らなかったと云うのに。
 僕はカップに紅茶を入れながら、独り言のような調子で呟いた。

「…さあ、何かな」

 彼にカップを差し出した。何の模様もない真っ白なカップからは、白い湯気が出ていた。アリスは単簡に礼を述べてそれを受け取って、両手でカップを持ちながら、

「…変な奴だな。ずっと思っていたが…厭世的だ。…いや、違うな。妙に達観していると云うか…」
「詰まらない人間なだけだ」
「そうかな…」

 釈然としないらしい。アリスは紅茶に何度か息を吹きかけて、それから窺うようにゆっくりとカップを傾ける。その動作はアリスと全く一緒だった。身体は違うのに、熱いものが苦手なところは変わらない。何処までがアリスで、何処までがエバか。考えると混乱するようだ。
 僕はその事から意識を逸らすように、

「…ところで。どうして僕の部屋に?」
「…話したかったから。迷惑だったか?」
「いや。君の部屋にも興味があったから」
「…俺は、ラビの部屋に興味があった」

 惑わかすような事を云う。こういった言葉選びはアリスには無かった。それなら僕が彼を例えば抱くとして、意思がエバなのだとしたら、抱く相手は紛れも無くエバだ。その事実は僕を落胆させたし、或は罪悪感も払拭させた。僕は目の前の相手に何を見ているのか、何を期待しているのか、自分でも未だによく解らないままだった。
 カップを置き、少し冷たい彼の頬に左手で触れる。少し温いのか、気持ち良さそうに目を細めて、僕に触れさせるままにする。…この表情はアリスのものだ。

「…別の男の部屋に入って、その男にこうして触らせるなんて。君の恋人が知ったら怒るだろうね」
「…そうだけど…、」
「…解らないな。君には隣人が居るのに。一体僕にどうされたいの」

 黒色の髪の毛の感触は、矢張り以前と変わる事がない。首筋に手を滑らせて、そのまま手を下まで動かすと、服を捲し上げて彼の身体に直接触れる。彼の身体は以前より華奢で、柔らかく、身体はアリスのものではなかった。
 彼も僕の頬に触れる。指先や手の平は温かく、その心地良さに心が徐々に絆される。手は滑らかに下の方へと落ちて、僕の服の襟を掴むと、少し強く自分の方へと手繰り寄せた。そうして僕の目を見たままで、

「…触って…それで、好きにして欲しい」

 ーー聞き覚えのある言葉だった。その懐かしさに身体が震え、思わず後少しでアリス、と名前を呼びそうになった。
 その名前を呼んでしまう事のないように、彼の唇にキスをした。彼は僕を受け入れて、唇を開き、僕の舌に舌を絡めた。舌も息も熱い。
 恋人ともこんなキスをするんだろう。そう思ったのは最初だけで、直ぐにそのような事などどうでも良くなった。僕は彼にもっと触れたかったし、彼は僕に抱かれたがっている。それだけの話だった。彼の手が僕の背中に回されて、甘い吐息や掠れた声が零れていく。

 何時に云ったのかは解らないが、すっかりその甘美な空気に飲まれてしまい、僕は彼に愛を囁いた。それは嘘ではなかった。確かに彼が愛しいと思ったし、恐らくこの瞬間が、ラビとしてのこの人生において一番幸福な瞬間でもあった。
 その言葉を聞いた彼は、何の抵抗もなく、恐らく嘘ではない愛の言葉を口にして返した。…目の前の僕を幸福にするが、同時に確実に一人の人間を傷付けるような言葉だった。その瞬間、腕に抱いている彼は僕の恋人ではないのだという事を、今更ながらに自覚した。刹那彼を少しだけ恨んだ。好きだと云うのに、僕に簡単に抱かれるのに、それでも心は未だ別の男のものなのだ。否、それとも心だって既に僕のものなのか? そう思えるほど僕は鈍い人間ではなかった。恐らく短い付き合いではないのだろう、恋人として傍に居る男を例え愛してはいなくとも、情の1つや2つはある筈だった。恋人ではない男を欲する事が出来るくらいの軽い情で、それでもその為に切る事はないくらいの重い情だ。

 突然僕の左目から、一筋の涙が溢れ、頬の上を音も立てず伝った。この涙が何を意味するのか僕には解らなかったし、当然腕の中の彼はもっと解らないようだった。彼は不可解な顔をして、「どうしたんだよ」と云って僕の涙を優しく拭った。その動作はアリスのものだった。アリス、と名前を呼びたかった。然しその名前を呼ばれるべき人間は、最早何処にも居なかった。僕はこの時自覚した。僕はアリスを愛していた。解っていた筈だったのに、何処かでそうだと思わずに、鈍く、鈍痛で済むように、誰でもない僕が傷付かなくても済むように、自覚している振りをして、何処かでまるで他人事のように思って、何時だって視線を逸らすようにした。
 先程僕は「好きだ」とは云った。然し「愛していた」という僕の感情に一番相応しい言葉を云う事はなかった。何故なら彼はそれを云うべき相手ではなかったからだ。僕はこの時には彼に何を見ていたのか、そして彼は本当は誰であるかを理解していた。だから僕は代わりに云った。

「…何でもないよ」

 彼は納得はしていないようだったが、「そうか」と云って、僕の顔を自分の方へと引いた。視線を交えた彼の目は、何時かの日のように僕を咎めていた。それでも何時ものように何を云う事もなく、僕がしたように、代わりに僕の唇にキスをした。
 その動作も矢張りアリスのものだったが、僕は彼を心の中でアリス、と呼ぶのはもうやめる事にした。僕が彼をアリスと呼んでしまうのは、未練がましく、何にもならず、誰も幸福にする事がなかったからだ。
 その日漸く、僕の中でアリスは死んだ。



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