会話文。


「財布盗られた」
「ご愁傷様」
「お前の分も盗られた…」
「待て。何で本官の財布まで持ち歩いていた?」
「て云うかスリされるなんて前代未聞なんですけど?! お兄たん盗る側だったのに!」
「平和ぼけしたんだろう」
「うっ…。…ラビさあ、ベルトとかにお金挟んだりしていない?」
「まさか」
「役に立たない」
「…頭にストローが通る穴、どれくらい開けられたい?」
「怖い! …まあ、大丈夫だよ」
「文無しで何が大丈夫なんだか」
「女王に連絡してお金を送って貰えば良いじゃない」
「…まあ、確かに」
「それじゃあお兄たんが電話するけど。ラビは黙っている事」
「何で?」
「女王と仲が悪いからだよ」
「そんな事はない。朝食の卵にコガネムシを置かれる位だ」
「女王陰険だな! 女の子みたい。怖い」
「電話しないのかい」
「ああ、そうだった。よし、かけよう」

「…あ、もしもし女王」
『ジャバウォック? どうしたの』
「お金なくなった」
『……何で?』
「盗られた」
『莫迦なの? …呆れた。そこでの仕事、一週間後にもあるでしょ』
「だから送って…」
『悪いけど、そういう事まで面倒見切れない。…自分達で何とかやって頂戴』
「えっそ、そんな、女王」

ガチャンッ。

「…切れた」
「何してるんだ」
「いや、本当、何してるんだろう」


「どうしよう! お金がない!」
「ちょっとそこで売ってきたらどうだ」
「何を」
「身体」
「いきなり過ぎるよ?! そこまで安くないよ?! そうだ、ラビ、お前の時計高かったよね」
「…ジャバウォックの靴こそ…」
「…ピアスとかは?」
「…ヘッドフォンとか」
「アイデンティティだよ! …お互い譲れないね」
「売る事も出来ないとなれば、稼ぐしかないが…」
「……」
「…ジャバウォック、昔フランスに住んでいたんだろう。何か伝手はないのかい」
「…皿洗いと靴磨き、どっちが良い」
「…そう云う伝手ではなく…」
「社会の厳しさ舐めるなよ?! そういうものしかないよ!」
「ええ…」
「と云うか寧ろ売上を盗んだのがバレて、出入り禁止又は見付かったら卵を投げられるお店も多い」
「何しているんだか…。…知人は?」
「…ちょっとラリってて、薬かセックスにしか興味ない奴等ばっかだけど…」
「………」


「ええ? あんた等お金盗まれたの? ちょっと、此処の宿泊費どうすんの」
「と、いう訳で、今から一週間だけ雇ってくれる場所を探そうかと…」
「莫迦じゃないの? …そうね、でも、そっちの白髪の方」
「本官?」
「そ、あんた。あんた此処に泊まってから結構女の子のファンが多くてね、しょっちゅうあんたについて聞かれんの」
「此処でも女性キラーかよ」
「だから、あんたなら一階のウェイターとして雇ってあげるけど」
「本当かい?」
「一週間ならね。ま、タダで泊めてあげるだけよ?」
「助かる」
「あれっ、お兄たんは?」
「あんた? あんたはそんな騒がれてないわよ」
「冷たい」
「ウェイター2人も雇えないし。……」
「………」
「モップがけでも、って云いたいところだけど。やっぱりそんな余裕がこっちにも無いのよね」
「………」


「ジャバウォック。明日までに決めないと宿がなくなるぞ」
「分かってるよ! …思ったんだけどお兄たん役立たず?」
「…まあ、元凶だし」
「ざっくり云うね。本当どうしよう、今更コックに怒鳴られたくない」
「頑張れ」
「他人事! …そうだ、帽子屋に助けて貰おう」
「…女性に頼るとは情けない…」
「もうイタリア男の面目丸つぶれだよ。然し背に腹は代えられない」
「……」
「と云う訳で、届け電波!」


『ジャバウォック。どうしたんだ?』
「帽子屋。実は斯く斯く然々」
『ふむ、成る程、便利な事によく解った』
「本当? なら、」
『然しタダでと云う訳にもいかんなあ』
「えっ」
『そうだな…。例えば、ラビアリのちゅーのビデオだとか、如何かな』
「お兄たんが撮るの?」
『まあ何でも良いけど』
「ちょっと無茶ぶり。…ラビ、どうよ」
「スナッフフィルムになりそうだ…」
「…だ、そうだよ」
『ふーむ。なら無理だな。まあ、気が変わったらまた連絡くれ』
「えっ」
『それじゃあ』

ガチャン。


「…駄目と解った途端! 商人!」
「どうしようもない。仕方ないからジャバウォックは野宿かな」
「犬に噛まれるよ…! どうしよう…」
「だから身売りしろとあれ程」
「何? 何なの?そんなにお前の恨みを買った覚えはないんだけど」
「大丈夫。ジャバウォックなら多分3ストロは貰える筈だ」
「しかもお兄たんの身体フランスパン一本にも満たないって云うね。泣きたい」


続 かない。
パリ・ロンドン放浪記が面白くて貧乏させたかったです
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