地下救護牢シリーズ@地下救護牢〇七番にて
1〜6話:終
☆まえがき★

原作ベース。シリアス。

初めて書いたイチウリ小説。

ジャンプを読んでて、牢に囚われた雨竜が「こんなもの無くても、どうせもう僕の霊力は…」としんみり思ったコマを見て、むらむらとイチウリ的妄想が浮かび書いた話。

尸魂界で涅と戦い滅却師の力を失くした雨竜は地下救護牢に囚われた…原作128話の続きを独自に創作しました。

{2004年04月作}

##H1##1話[全6話]##H1##
「待とう。一護を…!」




茶渡の言った言葉が、雨竜の胸に重く圧し掛かる。


光りの届かない無機質な壁に囲まれた空間。

外界から切り離されたような薄暗い牢獄では、茶渡と岩鷲の気配の他には、全く何も感じない。


気配か……。


雨竜は自嘲気味に笑った。

いつも、空気のように、意識せずともその存在を感じていた霊圧が、全く感じられない。

まるで、空気が薄くなったようで息苦しい。

雨竜は深い溜息をついて、手首にかせられた手錠に視線をおとした。

地下救護牢〇七五番にて##H1##2話
##H1##
自分の細く青白い腕とは対照的に、無骨で、太く、大きな手錠。

霊圧を封じる為の戒め……。


今の僕にはお似合いだな。


この手錠は、禁を破った罪の証のようだ。

最後の滅却師として、使命をまっとうするどころか、志半ばにして、力の全てを失ってしまった僕への……。





命を賭けて、師匠の仇を討つつもりだった。

例え、滅却師を滅ぼした死神の住まうこの場所で、自分が死んだとしても、悔いはなかった。

僕の生きる目的は、師匠の意志を継ぐこと。

僕の命が今あるのは、師匠のおかげだった。

師匠が命を賭けて、僕を虚から守ってくれたのだ。

地下救護牢〇七五番にて##H1##3話
##H1##
その師匠が、死してなお、死神の玩具として弄ばれていたと知った時……。

師匠が、死神の援護を信じてたった一人で虚と戦い、そして死んでいった姿が、僕の脳裏に蘇った。

死ぬ間際まで、師匠が願い続けていた『死神と共存する』という道は、当の死神によって無残に踏み躙られたのだ。

その残酷な真実に、僕の魂は憤り、慟哭し、渦巻くような感情の激流となって、裏切り者の死神へと向けられた。


死神を倒す。


その一念が、僕を滅却師の極みへと駆け上がらせ、禁じ手となっていた力の全てを解放させた。

地下救護牢〇七五番にて##H1##4話##H1##

だが………



敵は生き延びた。



そして、僕は……滅却師の力を失った。



負けたのだ。



力の象徴であるクロスも…今は無い…。




閉じた瞼の裏に、オレンジの光の幻影が見える。


黒崎……。


僕はもう、君との約束を守れそうにないよ……。


思い出す……8月1日。


あの夏の日に、黒崎と交わした約束―――





滅却師の正装であるマントを仕立てている最中に、黒崎が訪ねてきた。

「うわッ、お前……こんなヘンテコなもん着るのか?」

……なんて、さんざん僕の衣装を馬鹿にした後、

「でもよ……石田って白が似合うよな」

そう照れくさそうに言って、黒崎は笑ったんだ。

地下救護牢〇七五番にて##H1##5話##H1##
「お前の、真っ直ぐで潔い心を現してる色だと思う」

向けられた瞳はどこまでも優しく、僕の好きなオレンジの髪と同じくらい暖かだった。

「尸魂界へ行くつもりなのか、聞きにきた」

と、やけに真剣な口調で告げられ、当然だろう……と表情も変えずに応えると、黒崎は一瞬硬く引き結んでいた口元を緩めた。

それはまるで、初めから僕の返答を知っていたかのように。

「俺は本物の死神の力を手に入れたぜ!!」

僕を真っ直ぐに貫くその眼差しは、これまでの黒崎とはどこか違う、乗り越えてきた者だけが持つ自信と、固い決意に彩られていた。

「俺達で尸魂界の死神共をブッ飛ばしてよォ、またここに戻って来れたら……。その時は敵だの何だのは無しにして、一からやり直そうぜ。虚と戦う仲間として。約束だぜ、石田!!」

地下救護牢〇七五番にて##H1##6話##H1##
黒崎に仲間と言われて、信頼してもらえて、僕は嬉しかった。

ずっと滅却師と死神の間に横たわっていた根深い確執が、僕達の代で終わるのだ。


そうなれば、僕も素直に言う事ができる。


最後の滅却師としてのプライドが、死神である黒崎に告げる事を拒んでいた、僕の本当の気持ちを……。


死神である君を愛していると……。





尸魂界の牢獄の中、目を閉じてなお思い出す、オレンジの光。


黒崎一護。


あの夏の日の約束は、もう二度と叶えられる事は無いのだ。


戦う力を失った僕は……


滅却師としての僕は、尸魂界で死んだのだから……。



黒崎…………



雨竜の瞳から、一筋の涙が流れた。


《おわり》


記念すべき初作品なのに、雨竜たんネガティブすぎ



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