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親の心なんとやら


 ――お父さんたちはとても大変です。

「……私もバンブルビーの扱いには苦労した」
 頭上から降る言葉にケイドは顔をあげる。まさか、ぼやきに同意の声が返ってくるとは思っていなかったからだ。
「彼はあんたの子供なのか?」
「私たちは人間のように有性生殖によって生まれる訳ではない。子ではないが、バンブルビーは我らの中では最も年若い……」
「末っ子か」
「人間風にいえばそうだ」
 出会い頭に銃を突きつけてきたクロスヘアーズやハウンドとは違い、バンブルビーは何となく人なつっこいところがある。それに、テッサやシェーンと打ち解けているところを見ると、人間で言えば大学生ぐらいの年頃と言っていいのかもしれない。
「人間でも、末っ子はわがままで手に負えないヤツがいるからな。バンブルビーは男だろ、まさか女じゃないよな」
「男だ」
「それなら苦労しただろ」
「ああ。なにをどう言い聞かせても言うことを聞かない」
「それはテッサも同じだ……あれほど交際禁止だと言い聞かせてきたのにこっそり彼氏を作って、しかも二年前からだ、二年だぞ? 信じられるかオプティマス! 親の言いつけを破って二年もつきあってるのがアレだアレ!」
「……女でも苦労は同じようだな」
「……まあな」
 深々とため息をつくケイドにあわせたようにオプティマスがゆっくりと、首を左右に振った。
「バンブルビーもようやく一人前の戦士に育ったと思っていたんだが、妙に気が荒くなってな。一緒にいたのがあのメンバーだから、気にはしていたが」
 あのメンバー、と言われてケイドが思い浮かべたのは、全員死ねば俺がリーダーと喜ぶクロスヘアーズと子犬のようなつぶらな瞳には騙されないとか言っていたドリフト、それに全身武器庫のようなハウンドだ。末っ子を荒くれ者の中に放り込んでおいて、影響されない方がおかしい。種族は違えど、悩みは同じらしい。
「テッサも昔は可愛かったんだ。俺のあとをついてきて……いや、今も可愛いぞ。なんてったって俺の娘だからな」
「バンブルビーも昔は素直だった」

「どうしたらいいと思う? あの二人」
「……俺には親バカ自慢をしているようにしか見えない」
 しみじみと苦労を語り合う二人を遠巻きに眺めていたテッサとシェーンはもう一人の話題の主、バンブルビーを見上げた。
「子供は子供なりに考えて頑張ってるのに、ねえ?」
 バンブルビーは頷いてテッサのぼやきに同意する。
 親の心子知らず、子の心親知らず、はどの種族にも共通する悩みなのかもしれない。

 END


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