小説 | ナノ
イライラドリフト


 ――ジョシュアを乗せたドリフトの不機嫌っぷりときたら

「あの緑のと恐竜で大丈夫なのか……こう言ってはなんだが……」
 少しは黙っていてほしい。非常に不本意な状況だが、背に腹は変えられぬ。だから乗せてやったのだ。そうでなければこんな人間、誰が乗せるものか。
「私が設計した……」
 元はと言えばおまえたち人間が引き起こした災厄だ。撒いた種は自ら刈るべきではないのか。その上、私たちよりも自分で設計した奇形が優れているだと? それならばあの奇形に助けてもらうがいい。
「! すっ……すまん! 悪かった! 悪かったからシートを元に戻してくれ! ドアを半開きにするのをやめてくれ! 頼むから! シードがおちるー!!」
 ……苛々することこの上ない。
「すまなかった。気が気ではなくてな……」
 今の人間に私たちが手をさしのべる必要などない。我らが命を張る必要などないのだ。だが、ハウンドもバンブルビーも危険を顧みず戦ったし、クロスヘアーズは殿をつとめている。私一人が役目を放棄するわけにはいかない……
「し、しかしアレだな。きみはあの緑のを随分信頼しているようだな」
 クロスヘアーズだけでなく、同胞を信頼しているだけだ。おまえたち人間にはわからぬだろうが。
「あれか。緑のはきみのこいびと……」
「黙れハゲ。次に口を開けば貴様を減速せず落とす。断っておくが、私は本気だ」
 ああまったく……? バンブルビー! 変な説明をテッサとシェーンにするんじゃない! テッサがブロマンスを検索するまえに撤回しろ! 笑ってないで止めてくれハウンド! クロスヘアーズ貴様は真面目にやれ真面目に!
 セ……センセイ? 違います違うんです! そんなのじゃありません! っていうか通信回線開いたりしないでください! お願いですから集中してください!
「……ハゲ。貴様は後で叩き斬る」
「ひぃっ!」
 誰がブロマンスだ、誰が!

 END


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