短編ログ | ナノ
だって、今日は

年に一回の”今日”と言う、彼の特別な日に拘ったって良いじゃない。だって、今日は、大切な大切なあなたの誕生日だもの。


その日、私は昨晩から続いていた任務を午前中に終えて、午後からはその任務の書類作りに追われていた。


「(よし、もう少しで埋めれる…)」


今回の任務では、負傷者、死亡者ともにゼロ。無事にターゲットであった敵の親玉を仕留めることにも成功した。残す所あとこの書類をボスに届ければ任務は全て完璧に完了する。


「あらん?名前ちゃんこんなところにいたのぉ?」

「ルッスーリア様!…お疲れさまです。」


するとそこへ、幹部の一人であるルッスーリアがやってきた。微かに血のにおいがすることから、彼…否、彼女も任務帰りだと分かった。


「んふっ!私のことはルッス姐さんでいいのに、ほら呼んでみて?」

「………ルッス姐さん?」

「良く出来ましたぁ!さぁ、名前ちゃん行くわよん。」

「ええ、え!ちょっと、ルッス姐さん!!?」


まだ、書類が途中だと言うのに、ルッスーリアが強引に私を立たせた。そして、部屋の外へとずるずる ずるずると引きずり出されてゆく。


「ああ、あの!ルッス姐さん!! 私まだ書類が途中なんですけど…」

「どれどれ?……うぅ〜ん。ま、これくらい名前ちゃんなら大丈夫よ!」


何たってボスは、名前ちゃんに甘いからねん、とルッスーリアは辺りにハートをまき散らしながら言うが、私はでも―――


「大丈夫大丈夫!安心しなさいなっ」

「ええ、えぇ…」


たしかに、ボスは私に甘い…と言うか、私には暴力をふるわない。それは私が、ボスに気に入られていると言うことなのだろうか?言葉数の少ない彼の本意は、まだ私は知らないけど。


「名前ちゃん、協力して欲しいことがあるのよ!」

「え……、私にですか?」

「そうなの、名前ちゃんにしか出来ないことなの!」

「私にしか、出来ないこと?」


急に足を止めたルッスーリアは、楽しそうな声色で私にそっと耳打ちをしてきた。私にしか出来ないことって、一体どんなことだろう?


トントン、
ボスの部屋に入る時は必ずする二回のノック。今日はなんだか、とても、重たい音に聞こえてきた。


「ボス、名前です。報告書を提出しに来ました。」


部屋の中からは返事はないが、いつものことだ。私はなるべく静かに、そしてゆっくりとボスの部屋の扉を開けた。

部屋の中にはいつものように机の上に足を置いたザンザスがいる。片手には、ウィスキーだろうと思われる液体の入ったグラスが持たれていた。何気ない仕草でも、ほんと絵になる人だなぁと少し見入ってしまう。


「ボス、今回の任務の報告書です。」

「……あぁ。」


閉じていた目蓋がゆっくりと開けられて、その中から赤い瞳が覗く。見るもの全てを圧倒し、制圧するかのようなその瞳。私はなんだか、背筋が伸びた気がした。


「あの……ボス、」


言わなければ、あの言葉を―――


「ボス……いえザンザス様。お誕生日おめでとうございます。」


私がそう言うと、ボスは微かに瞠目しカレンダーに目を遣った。そして、書類の重なる机にウィスキーの入ったグラスを置くと


「…今日だったか、」

「はい、本日は10月10日。ボスの誕生日です。」

「……」

「ルッスーリア様が誕生日ケーキを焼いたそうです。
 ボスもたまには、一緒に幹部の方々とお食事したらどうですか?

 って、こんな私の指図は受けませんよね。
 すみません、こんな出しゃばった真似をして……」


ザンザスの視線がまるで、体を刺すように痛い。やはり、誕生日を祝われるのは、ボスは嫌いなのだろうか?そして、私はザンザスの視線に堪えられなくなり俯く。


「それでは、私はこれで…失礼し「お前からはそれだけなのか」…ボス?」


いつの間にやら立ち上がっていたザンザスは、私の目の前へとやって来ていて、するりと私の右手を攫っていった。驚いて、顔を上げるとそこにはザンザスの赤く光る瞳が―――


「あぁ、あのボスっ、ちょっと待って、下さい。」

「今日は俺の誕生日、そうだろ。」

「はい、ですが、ちょっ!」

「誕生日ってことは、プレゼント貰えるんだろ。」

「はい、誕生日は無条件でプレゼントが貰えます、けどっ!」

「お前は俺にプレゼントくれないのか。」

「うぅ、まっ でも、ボスっ…」

「…うるせぇ。」


いつの間にか、背中には壁で目の前にはザンザスと言う窮地に追い込まれていた私。そして、ずんずんと近付いて来て、よりアップにクリアに見えるザンザスの顔。

ちょっと待って待って下さい、ボス!こ、心の準備って言うものが私には必要なんです!

 ぽふ…


「ま、待って下さい ボス!」


私は勇気を振り絞って、空いていた左手で近付いて来たザンザスの口元を押さえた。ザンザスはと言うと、私の行動が予想も付かなかったのだろう、不機嫌に眉を寄せた。


「あぁ、あのボスっ……私から、私からが…いいです。
 その…よろしければ、目を瞑っていてはくれないでしょうか?」


そっとザンザスの口元から手を離し、祈る様な目でボスに言う。ザンザスは少し考える素振りを見せながら、しぶしぶ目を閉じた。やはり、こうやって見ても、ほんと絵になる人だなぁと思った。

私が心を落ち着けている間も、右手はボスに掴まれたまま…そして、私はついに決心をした。


 ―――ちゅ


やっぱり恥ずかしくなって、唇にすることは出来なかった。私が口元から離れようとした時、ザンザスが動き強引に口付けた。


「っ!!? ん、ぅんんっ」


掴まれていた右でが自由になったと思ったら、放したその手をザンザスは私の後頭部へとやり、もう片方の手で私の腰を引き寄せる。

長くも短いその口付けで、私は足の力が抜けつつあり、ザンザスが支えてくれなければ、きっと立ってはいられないだろう。一度、きつく吸われてから、お互いの唇が離れる。


「…はっ、はぁ……ぼ、ボス。」

「……行くぞ。」


ザンザスはそう言うと、部屋から出て行こうとして歩き出す。私もそれに従い、荒れた息を整えながら、ボスの後に付いて歩いた。


ドンッとザンザスの足蹴りによって、開かれた扉の向こうには幹部の五人とルッスーリア手作りの特大、誕生日ケーキが待っていた。


『XANXUS, Buon Compleanno!!』


年に一回の”今日”と言う、彼の特別な日に拘ったって良いじゃない。だって、今日は、大切な大切なあなたの誕生日だもの。


end

20101010
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XANXUSはぴば!


以下ハイテンションでお送り致す!
まずはじめに、XANXUS, Buon Compleanno!!
お誕生日おめでとう!
ザンザス生まれて来てくれてありがとう!
そして天野先生ありがとう!!


それにしても、受験生が何やってるって話ですよね、はい、誕生日祝ってました← すみません、こんな駄文でザンザスさまの生誕をお祝いして…。でもでも、祝えたので嬉しかったし、満足です。後悔はしていない!キリッ

10月って結構忙しいですね。(どうしようリボーンとツナくんの記念夢)っていうか10/10の誕生日のキャラクターって多くないですか?そんなにも10/10は人気なのですかね。よく分かんないんですけど。

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