短編ログ | ナノ
砕けたクッキー

ミーはへとへとでアジトへ帰って来たんです。大広間へ向かう途中の廊下で、甘い香りが鼻腔をくすぐりました。

「何のにおいでしょー?」

その正体を確かめたかったミーは、ちょっと急ぎ足で歩きました。大広間の扉を開けると、その甘い香りが強くなりました。

「クッキー…ですか?」

テーブルの上には、手作りであろうクッキーが置いてありました。そっと手を伸ばし、そのうちの一つを掴んで口の中へ放り込みます。

「……おいしい。」

ルッスーリア先輩辺りが作ったであろうと思われるそれは、ひどく甘い味がしました。あのマッチョ、なかなかやるじゃないですか。


「あら…フランくん。」

すると後ろから女の人の…名前さんの声が聞こえました。それに思わずミーはドキッとして、慌ててクッキーを飲み込みました。

「任務お疲れさま。 報告書は提出しました?
 これからボスの部屋に行くんですけど、ついでに出してきましょうか?」

名前さんはヴァリアーの隊員の中ではめずらしい女性隊員な訳です。その女性らしい些細な気遣いとかが他の隊員達にはとても評判でした。

もちろん、彼女はとてもうつくしかった。王子(仮)からも、スクアーロ作戦隊長からも大きな信頼を得ています。

「ミーはまだ報告書が完成してないんでー」

「あら…そうだったの。よかったらお手伝いしましょうか?」

「えっ!」

誰にでも優しいと評判の彼女はミーまでにも優しかったです。にっこりとミーに向けられている彼女の笑顔はやっぱりうつくしかった。


「あ!もしかして、そのクッキー食べました?」

「…え…あ、はいー…丁度いい加減の甘さでおいしかったですよー」

「そうでしたか!それは良かったです。
 実は、ルッスーリア様に指導して頂きながら私が作ったんですよ。」

ルッスーリア先輩辺りが作ったのだろう、と勝手にそう思っていたこのクッキーはなんと、名前さんの手作りクッキーでした。

「それでは、私は一旦ボスに報告書を提出してきますね。」

そう言うと、名前さんは談話室を出て行きました。残されたミーは、もう一枚そのクッキーを口の中へと放り込んだ。

やっぱりそれは、ひどく甘い味と香りがしました。


end

20100919
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フラン、恋の予感!?


あとがき
いやぁ…捧げもの以来、フランくんの夢を書くのは久々だったのでいまいちキャラが掴めず、なんじゃこりゃ!なものが完成しました。

今回の主人公は幹部ではないけど、幹部と同等の地位に居る女性隊員でした。
タイトルからは、なんだか悲恋漂う感じですが、内容は甘いようなそんな感じで…フランくんは評判の主人公さんを、ちょっと意識してたらいいなぁって思う。

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