短編ログ | ナノ
あなたの唇が

「貴女が名前さんですね?」


突然、後ろからの声掛け。
振り向けば、そこには赤と青の光る眼。


「気に入りました。僕のモノになって下さい。」


その人は私に笑顔を向けて、そっと
自身の右手を私に差し出した。


「突然、何なんですか…」

「綺麗な声ですね…もっと気に入りました。」


下ろしていた私の手を
彼はしっかりと両手で握った。


「僕のモノになりませんか?」


今度は私と目を合わせて彼が言う。
顔がゆっくりと近付いてきた。


「……っ!」


くっ付いて、すぐに離れた私と彼の唇。
それは案外柔らかくて冷たい。


「最低、ですね…あなた。」


間近で見えた、あなたの眼。
そして、触れ合った口と口が…


「クフフ…褒め言葉として取っておきます。」


そう言った彼は、私に
綺麗に、そして歪んだ笑みを見せた。


(あなたの歪んだ唇が)
(さも私を愛おしそうに)




end

20100904
----------
あとがきと言う名の懺悔
冷静になってみると、見ず知らずの人に呼び止められて
痴漢行為を受けるという、犯罪のにおいのするお話でしたね。

::85::

×||×
ページ: