「貴女が名前さんですね?」
突然、後ろからの声掛け。
振り向けば、そこには赤と青の光る眼。
「気に入りました。僕のモノになって下さい。」
その人は私に笑顔を向けて、そっと
自身の右手を私に差し出した。
「突然、何なんですか…」
「綺麗な声ですね…もっと気に入りました。」
下ろしていた私の手を
彼はしっかりと両手で握った。
「僕のモノになりませんか?」
今度は私と目を合わせて彼が言う。
顔がゆっくりと近付いてきた。
「……っ!」
くっ付いて、すぐに離れた私と彼の唇。
それは案外柔らかくて冷たい。
「最低、ですね…あなた。」
間近で見えた、あなたの眼。
そして、触れ合った口と口が…
「クフフ…褒め言葉として取っておきます。」
そう言った彼は、私に
綺麗に、そして歪んだ笑みを見せた。
(あなたの歪んだ唇が)
(さも私を愛おしそうに)
end
20100904
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あとがきと言う名の懺悔
冷静になってみると、見ず知らずの人に呼び止められて
痴漢行為を受けるという、犯罪のにおいのするお話でしたね。
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