短編ログ | ナノ
うさぎさん

うーー 頭が痛い。
昨日は早く寝た…はずなのに。
あーー 体が重い。
確か、頼まれてた資料を仕上げて、それを雲雀先輩に届けてから(…あ。)結局、昨日は残りの仕事を片付けようと思って 二時過ぎまで、一人で頑張ってたっけ?…なんでだろ。周りの風景が…歪んで、見える…?






まさかね、この歳になって仕事中にぶっ倒れるとは…そして、只今、私名前は獄寺に説教を食らっている。これでも一応彼、獄寺隼人は私の恋人である。一応、言っておくが。


「だから無理すんなって言ったのにお前は…」
「ごめん、ごめん…」

「謝るくらいなら、次からぶっ倒れるな!折角十代目だって心配して下さったのに!!」

「はいはい…善処します。ってかさ、病人なんだから怒鳴らないで」
「けっ」


そう言いながら、獄寺は名前の横たわるベッドの脇に置いてあるイスに座る。それからは、いつもの音量に戻って話してくれたから、良しとしよう。


「それにしても、なんで徹夜なんかしたんだ?」

「だって…仕事溜めると、ツナに迷惑かけちゃうでしょ?
 それに、私…結構頼られてるからね、ツナに」

「なっ!! 俺は十代目の右腕だぞ!お前よりも頼りにされてんだよ!」

「確かに右腕の獄寺サンは、ドン・ボンゴレから頼りにされてるとは思いますけど
 獄寺サンと私では、その頼りにしているの意味が違うんですよ…ふふ」

「はぁっ!? ちょ、名前!どう言う事だ!説明しやがれっ」

「あーもー うーるーさーいー! 私、これでも37.8℃ある病人なの。
 静かに出来ないんなら、帰って仕事でもしてなさい。右腕隼人サン!」


私がここまでを一息で言うと、勢い負けした獄寺は静かになった。そうそう。静かにしてくれないとね。熱は下がってきたけど、まだ頭は痛いし、喉も痛いんだから…だけどまさか、高熱で倒れるとは思ってもいなかった。熱出すなんて、小学生以来だなぁってほんのり考えていると獄寺がまた怒鳴った。

私は、病人だって言うのに。…ここは、一応ボンゴレの医務室だから、静かにすると言うルールは特に設けられてはいないけど。


「オイッ!聞いてんのか、名前!」
「ぁーぅー……多分。」

「(プチッ)聞いてなかったな、コラ」

「ははっ…なんか、コロネロさんみたいだよ、隼人。」
「うるせー!!」


再び怒鳴った獄寺を横目に、名前は両耳を手で塞いだ。獄寺はその様子にまたキレそうになったが、グッと堪えた。



「ほら…食えよ」
「へ? ………リンゴのうさぎさん?ってえ!!? これってもしかして…」

「そーだよ、俺が剥いたんだ!わりぃかよ、大切な彼女に剥いてやっちゃあ悪いかっ!!」


私がそこまで言うと、獄寺が怒鳴る…もとい、それは逆ギレに近かった。そして、言い切ると真っ赤な顔をして私に皿を突き出す。


「…あ、ありがとう……すごく、嬉しいよ。
 悪いなんて全然思ってない。 でも…まさか私の為に、ね」

「早く食えよ」

「ははっ、ありがとう…隼人。(シャリッ)…うん、おいしい。
 隼人ってさ、器用だね。私、ウサギ形になんて切った事ないよ?」

「こんな簡単な事も出来ねぇのか!……別にやってほしくねぇけど」


ちょっと小馬鹿にしたように、フンと鼻で笑った獄寺。しかし、最後に本音がぽろり。


「隼人も食べたら?おいしいよ、このうさぎさん。」
「はぁ!? ……んなモン食べねーよ(オレがお前の為に剥いてやったんだから)」

「そう?…おいしいのに、」

「つーか、今度は無理すんなよ、ちゃんと休め!」
「……。 はいはい、善処します。」


今度、ビアンキさん辺りに『リンゴのウサギさんカット法』を伝授してもらおうと密かに思った。

(もしも今度)
(隼人が風邪を引いて、私みたいにぶっ倒れたら)
(その時は私が、この”うさぎさん”を作ったげるね)


end

20100828

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