任務の帰り道。
その日はいつもの運転手が風邪をこじらせたとかで迎えの車が用意出来なかったらしい。
ベルとの任務は以外とあっさり終って(本当は二日ほどかかる予定だった)
血だらけのベル……と私が一般のタクシーなんて乗れるはずもなくて、仕方なく二人で歩く事にした。
「まじありえねー 王子歩かせるとか何様!??」
「そんなこと言ったって仕方ないじゃん…」
「あの運転手…帰ったらサボテン決定!」
「…そんな理不尽な」
ベルはさっきから文句たらたらで、隣りを歩いている。
ただ風邪引いただけなのに、ベルにサボテンにされちゃう運転手さんが不憫なので、私はそれを阻止する事を誓う。
「どわっ!!」
「うわ…名前ダッセェー、ししっ」
私は木の根につまずいて、盛大に転けてしまった。
これでも一応は暗殺者の私…これじゃ、まるで…
「(ディーノさんみたい)……ってか笑うな!」
「しししっ…だってお前…ししっ」
転けた事にへこみながらその状態でぐすぐすしているとベルが笑いを堪えながら、手を差し出してきた。
「ん…また転けると危ねぇから。名前ドジだし」
「……最後の言葉はいらないからっ!!」
「ししっ、王子やっさしー」
「無視かよ」
そう言いながらも、差し出された手を戸惑いながら私は握って、立ち上がった。
一瞬よろけて、また倒れそうになったけどベルが支えてくれた…って言うか、顔が近い!
「ご、ごめん!!」
「っ!! …べつに」
急いで謝った私に、ベルは素っ気なく返事をすると歩き出した。
ベルが歩くので自然と私の足も進んだ。
ちらっと隣りのベルを覗き見ると、前髪で隠れてしまって目は見えないけど、何だか赤い顔をしている。
さらさらと揺れる金髪の隙間から覗く耳も染まっている。
「(ベル……もしかして、照れてる?)ふふっ」
「なんだよ、いきなり笑い出して…名前キモー」
「キモーってそれ、ヒドくない?」
私の手から、ベルの手へと手の温度が徐々に移っていく。
ベルが照れてるとこを見てたら、何だか私まで照れちゃうよ。
あー あー、柄にも無く緊張してきた。
「……お手て繋いでベルと帰るだなんてね。
これでも一応、暗殺部隊なんだよね?私たち…」
私の言葉に返事は無かったけれど、私の手を握るベルの手の力が、ぎゅうって、確かに強まった。
隣りを歩くベルに私の心音が聞こえたらどうしようか、と共有する手の温度に私はそんな事を考えていた。
夕焼け小焼け
(お手て繋いで王子と帰ろう)
(鴉と一緒に帰りましょう)
end
20100816
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倭凪様リク
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