あ、これってアイツの読んでる雑誌の新刊じゃね?
(買ってってやろー)
そういえばこのジュース、アイツ好きだよな。
(こっちのジュースは俺の分っと)
ん…この服、アイツが欲しがってたヤツじゃん。
(喜ぶぜ、きっと…)
お、このブーツ絶対アイツに似合うし…
(………ついでだし…買お)
…………。
待て 待て 待て。
俺、待て。
何で俺はこんなにも買ってんだ?
俺はただ、少し腹がへったから店に寄っただけであって、アイツの…名前におつかいを頼まれた訳じゃない。しかも、なんて量を買い込んだんだ?王子はこんなにも大荷物を持つべきじゃねぇよな。ってか、こんな量の荷物を持ったのはじめてかもしれねぇな。
店の中をふらふらとしてると、目に付いたいろいろなモノ。すると、頭の中に名前が浮かんで来て…気付いた時には、もうカゴの中はアイツの為のモノでいっぱいだった。そして俺の頭の中には、アイツの喜ぶ顔でいっぱいだった。
「あ、ベル」
「…っ名前!?」
なんだよ、いきなり出てくんなっつうの!驚いて、王子 変に叫んじゃったじゃねーかよ。そんな俺の姿を見ても特別に不思議がる訳でもなく、寄って来て微笑むアイツ。あー、何か……多分、今の俺 顔が赤いかも。
「ベルがここで買い物ってめずらしいね、何買ったの?」
無邪気にたずねてくる名前は俺が持っている袋をちらちと見る。
「別になんでもねーよ……そうだ」
俺は恥ずかしくなったが、良いことを思い付いてニヤリとアイツを見た。
「え、なに?」
「お前がこの前欲しいって言ってた服買ってやったぜ?」
「え!ホントに!!」
「だけどな――「ありがとう、ベルっ!!」っちょ、名前!!」
そう言うと名前は笑顔で俺に抱きついて来た。って、ちょい待てよ!
「どうしよっ…ベル、ありがとね!
あの服、私には値段が高かったから買えなくて…だからホントに嬉しいの!」
耳元でうるせーよ、とか、いきなり抱きつくな、とか…今の俺にはそうアイツ言ってやる余裕は少しも無かった。
なに嬉しそうな顔してんだよ。
「…そりゃ、よかったな」
「うん、ありがとう!!!」
しかも、笑顔で”ありがとう”とかは反則だぜ?
つーか、もう金を請求するなんて出来ねぇよな。こんな顔して喜んでるんだから。
「あれ?こっちのブーツも…もしかして?」
名前は厄介なことに気が付いてくれた。
あぁもう!わざわざ買ってやること無かったぜ!自分で分かるくらいに、顔が熱い。
「…そうだよ、お前の為に王子がわざわざ買ってやったんだ!」
感謝しろよ、と俺が言う前に再び名前に抱きつかれた。だから、ちょっと待てよ!こんなことされたら、王子の心臓が保たねぇし。
「ベル、この袋の中身 全部私の為に…でしょ?」
「なっ! べ、別にそんな訳ねぇし」
「ふふっ…隠さなくてもいいのに。 ねぇ、ベル…ありがとう。好きだよ。」
ん?今アイツなんてった?
目の前には、顔を真っ赤にして微笑んでいるアイツ。
俺…今――――
こくはくされました。
end
20100727
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夏休み企画6
椿様のリク
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