短編ログ | ナノ
強がりな姫

「名前ー……」

昨日も今日も”キミ”はいない。

それでも僕、寂しくなんか ない。
いつもより少し、退屈な だけ。

自惚れてちゃだぁめ!

僕は強いんだから。
一人の夜だって、堪えてやるもん。

”キミ”が傍に居なくたって、”キミ”の子守唄が聞けなくたって…

僕は全然、平気なんだからね!


「…何してるんだよーぉ……」

平気なんだから…全然 大丈夫だもん。

寂しくなんか ないんだもん。


「ろ、ロード様っ!!?」

名前の声で目が覚める。
僕はいつの間にやら寝てしまっていた様で…


「こんな所で寝てたら風邪引きます!
 ちゃんとベッドで寝ていただかないと…」


そう言いながら、僕を抱き起こそうと伸ばされた”キミ”の腕―――僕はその腕をかわして思いっ切り抱き付いた。

「ろっ、ロード様っ!!!」

上から驚いた、”キミ”の声が降ってきた。
でも僕は離してやんない。

”キミ”が居ない時に、いつの間にか作り上げた強がっている僕が一気に崩されていく。

もちろん、それは”キミ”によって…

「何処に行ってたんだよー」

「何処って言っても…
 出発前にちゃんと報告しておいたのに 忘れたので?」

「三日も前のことなんて、僕覚えてないよ、」

そう言いながら、ぎゅっと顔をすりつける様に強く抱き付く。

子供っぽいって言われてもいい。
わがままだって思われてもいい。

「僕待ってたんだから…」

「はいはい。…ありがとうございます、ロード様。」

”キミ”はそう言いながら、僕の頭をぽんぽんと撫でてくれた。

「寂しくなんか、なかったよ。」
「…はい。」

「別に全然、平気だったしぃー」
「…はい。」

「ちょっと、退屈だったけど…」
「……ロード様、」

僕の視界は、じわじわと霞んでいく。
どうしたんだろうね、僕。


「名前のバーカ…」

「…ごめんなさい。」


”キミ”はバカ。
”キミ”はバカだよ。

僕を待たせて…ほんとバカ。


「おかえりぃ。」


でも、僕が”キミ”を待っててあげるのは、”キミ”が帰ってきた時に、微笑みながら僕の頭を撫でて、抱っこしてくれるから。

どうして?なんで?って…”キミ”に言いたいこと、逢えない間に沢山あったのに。

僕は”キミ”が僕の傍で、こうやって今微笑んでくれるだけで満足なんだぁ。


昨日も今日も”キミ”はいない。

それでも僕、寂しくなんか ない。
いつもより少し、退屈な だけ。

自惚れてちゃだぁめ!

僕は強いんだから。
一人の夜だって、堪えてやるもん。

僕は全然、平気なんだからね!


「ただいま。ロード様」


でも、帰ってきてくれて 嬉しい。
嬉しいよ、バーカ、


end

20100717
20130606 加筆

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