けたけた、けたけた。
姫は笑います。
姫のその視線の先には、任務を失敗したティッキーが。
伯爵様の傘のレロからくどくどと説教をされています。
けたけた、けたけた。
さも可笑しそうに、姫は笑います。
「そんなに面白い?」
「うん。名前は面白くないのー?」
「はい…ちっとも。」
姫はまたくすり、と笑いました。
しかし、私には何が面白いのかが分かりません。
この…もやもやとする気持ちは何でしょう。
姫を独り占めしたい。
姫にもっと自分のことを見て欲しいと。
そう思う私は変でしょうか?
「そういえば…この間の少年とはどうなんです?」
「んー? アレンのこと?」
姫はまた楽しそうな顔をされました。
あの時―――方舟での再会を喜ぶキス。
私の中には、黒い感情がふつふつと沸き出しました。
あの少年が気に入らない。憎い…と。
「ロード様はあの少年のことがさぞかしお好きなんでしょうね…」
「そーだよぉ…だって面白いじゃんか…」
「面白い?」
面白い、と姫は呟いてまた、けたけた、けたけた。
訝しげに私は姫を見やると、姫はにやりと口端を上げました。
これは、悪戯を思いついた時の顔ですね。
「だって…」
「だって?」
姫はまた、笑いました。
けたけた、けたけた。
「名前にヤキモチ妬かせるのに打って付けでしょお?」
「や…き、もち……」
その瞬間、頬に感じた柔らかな感触。
その感触がロードの口付けだと言うことに気付くまでに少々時間がかかってしまった。
「顔、真っ赤だよぉ…名前〜」
「…ロード様のせいです!」
「照れてる。かわいー名前」
そう言って姫は私に飛びついてきた。
ちょっと…いきなりですね、危ないですよ。
「僕ね、アレンのこと好きなんだ…」
姫は私に抱きついたまま、そう呟いた。
私の心はちくん、と痛んで、黒い想いがまた沸いた。
「でもね…名前のことはもっと好きなんだ、」
その時、私を抱き締める腕の力が強くなった気がした。
これは私の勘違いか…それとも―――
けたけた、けたけた。
姫は笑います。
けたけた、けたけた。
さも可笑しそうに、姫は笑います。
私はそんな姫のことが、独り占めしたいくらいに大好きです。
end
20100716
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