カップラーメンが出来上がるまでにかかる時間。それは三分。
そのたった三分は長く感じられるかもしれない。そのたった三分は短く感じられるかもしれない。その時の自分のお腹の減り具合とか、その時の自分の状況に応じて変わってくると思う。
ようするに、時間の過ぎるのはどんな人にだって平等に与えられているけど、それをどう感じるか。三分間は長いか、短いか。ようは個人差。だけどわたしが、今までにこんなにも三分間が早く過ぎて欲しいと願うのは初めての経験だった。
待っているのはカップ麺ではなくて、わたしの大好きな”人”。
それはボンゴレ本部の、玄関にて。悪いな、といって男は女の頭を撫でた。女はそれを嫌がることなくやんわりと受け止める。
「名前は、やさしいよなぁ…」
「へ?…そんなことないわよ?」
あなたの周りにいる連中が異常なだけだよ、と女は言う。それもそうかぁ…と男がくしゃりと笑うと女も笑った。
「ほんと悪いなぁ…」
「いいわよ、べつに!」
男をなだめるような笑顔で女はその男の手を取る。そして、ふんわりと両手で握った。
「さぁ、がんばって来て!」
「おぅ…。今日の埋め合わせは名前、絶対してやるからなぁ。」
「いいっていいって。大丈夫!」
男は本当に申し訳なさそうな表情になる。それを見ていた女は、男の背後に回ってトントンと背中をたたく。
「ほらほら!早くいってらっしゃい!…じゃないと、ボスに叱られちゃうわよ?」
女は男の背中を押して、何とか玄関から出させようと試みる。男はそれに抵抗しつつ、首を回して女を見ている。
「あぁ、でもよぉ…俺のせいで―――」
「もぅ…気にしなくていいって言ってるじゃない! わたし…」
女は男の背中を押していた手を止める。男は黙って女の次の言葉を待っていた。
「わたしにだって、書類整理とか色々仕事があるんだから…」
「それもそうだろうけどなあ。」
「悪いのはおたがいさまよ。」
女はそう言って男の背中に頭をこてん、と傾けた。手は男の服を握っている。
「本当はわたしだって、申し訳ないって思ってるんだから。」
「…名前。」
「だって…久々の二人そろったお休みの日だったし……」
「久し振りに、スクアーロと一緒に居られるかなって思ってた、けど―――」
女は男から離れて、男の前に回った。そして正面から男に抱きついた。
「だからね、今日は早く帰って来てよね?」
きゅっ、と予想外に抱きついて来た女に男は顔を赤くした。
「今日くらい、好きな人と一緒に居させてほしいから…」
「うおぉ……そうだな、わかっ… !!」
女はそう言って、男から離れると彼の頬にキスをした。そして男は更に顔を真っ赤に染める。
「…さ」
「さ?」
「三分で帰って来るから、名前!お前はこの場を動くんじゃねぇぞお!!」
男はそう真っ赤な顔で叫びながらボンゴレ本部を飛び出して行った。
「いってらっしゃい、スクアーロ。」
玄関にはくすくすと笑う女だけが立っていた。
カップラーメンが出来上がるまでにかかる時間。それは三分。そのたった三分は長く感じられるかもしれない。そのたった三分は短く感じられるかもしれない。
だけどわたしが、今までにこんなにも三分間が早く過ぎて欲しいと願うのは初めての経験だった。
待っているのはカップ麺ではなくて、わたしの大好きな”人”。
ちゃんと待ってるから、早く帰ってきてね?
end
(う゛お゛ぉいぃ!…心臓に悪りぃぞぉ……い、いきなり過ぎだろお!!!)
20100523
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