短編ログ | ナノ
当たり前は当たり前じゃなくなった

彼女は雨が好きだった。
ふとそんな記憶が蘇る。自分の部屋の窓から外を眺めると、急に降り出した雨に、箒にまたがった弟たちが、慌てて引き返してくるのが見えた。庭では母が杖を振り、急いで洗濯物を取り込んでいる。
寮は違ったけれど、本の趣味が合うことに気付いて親しくなった彼女は、読書家で、いろんな作家を紹介してくれた。ある時、図書館で、彼女は本ではなく窓の外を眺めていた。外は雨降りで、いつもより人が多かったのを覚えてる。
曰く、雨の日は堂々と本を読んでいられるから好きらしい。僕は、君の横顔をこっそり眺められるから読書が好きだった。卒業して、そんな当たり前は当たり前じゃなくなっちゃったけどね。

20190822(292字)

:::ビル・ウィーズリーさんには「彼女は雨が好きだった」で始まり、「当たり前は当たり前じゃなくなった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば2ツイート(280字程度)でお願いします。

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