小さな嘘をついた。
あの日のうちに、「ごめん、嘘だよ」って言ったらよかった。ちょっとした仕返しのつもりだった。いつも君にしてやられるから、あの時の僕は、ものすごく腹が立っていたんだ。
だから、「もう君なんか嫌い。出てって!」と、僕の言葉に驚いて、少し涙目になった君が煖炉の中に飛び込んでも、呼び止めなかった。むしろ、君の後ろ姿が、揺らめく緑の炎に消えていったのを見て、清々してたくらいだった。
そうしたら、次の日から君は家に来なくなった。はじめはそれで満足だった。だって君、いつも突然やってきて、僕の予定をめちゃめちゃにする迷惑で失礼なやつだから。君が傷つけばいいと、僕と同じ気持ちを味わえばいいと思って、僕は自分のために君が嫌いだと嘘をついた。
本当は、僕が君のことを嫌いになんかならないの、君だって分かってるって思ってた。でも、もう一ヶ月も君に会ってない。煖炉の火は消えたまま。取り返しのつかないことになった。ねえ、君が嫌いなんて、全部嘘だよ。
20190822(420字)
:::「小さな嘘をついた」で始まり、「全部嘘だよ」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字)以内でお願いします。
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