短編ログ | ナノ
誘惑のおみ足

他の六つ子が出払っている時に、幼馴染の名前がうちに来た。目に眩しい短いスカートを履いて松野家に遊びに来た。童貞の僕を殺す生足。僕はきっと試されてる。

「あれ?今日はお友達いないの?」
「……今、いないだけ」
「あ、そう」

何か話をしなくては、ついむっちりとした足に目がいってしまう。あの足で踏まれてみたい、なんて思ってしまう。でもその前にじっくりたっぷり撫でて触って…ああ、クソ!どうしてこういう日に限って誰もいないの!十四松カムバック!

「クソ松と釣り行ったらしいね、二人で」
「あ、うん。行ったよ」
「あんなやつと二人で釣りとかよく行けたね。恥ずかしくないの?」
「カラ松くんがああなのは、今に始まったことじゃないからね。慣れたよ」
「へえー…」
「あ、でもね。本当はトド松くんもいれて三人で釣り堀行くつもりだったんだよ」
「は?」
「でも、トド松くんが急に女の子からのお誘いがあったみたいで、そっち行っちゃったから、カラ松くんは気を遣ってくれてさ、釣り堀行きをキャンセルしても良いって言ったけど、でも、もう私は釣りする気分だったから成り行きで…あ、そうだ!今度釣り行くとき一松くんも行かない?一緒に、四人で」
「はぁ? 行く訳ないし、そんなの」
「ええ?行かないの?釣れると楽しいよ? ま、釣れるまで時間がかかるんだけど」
「行かないって言ってるだろ、馬鹿なの? ていうか前から思ってたけどさぁ、こんな男所帯にのこのこ上がり込んできて危機感とかないの?」
「え、何に対する危機感を抱けと…」
「今だって、他の兄弟みんな出払ってて、母さんもいない。俺とあんたの二人きり…しかもこんな短いスカートだって履いてきて、そのキレーな生足晒しちゃってさぁ…ほんとなんなの?馬鹿なの?痴女なの? それとも何?僕を試してるわけ?」
「一松…」
「鈍感なあんたにも分かりやすいように、あからさまな気分悪いオーラ出して、暗に危険だから帰れって意思表示してんのに、こっから出てく気もないみたいだし…完全に誘ってるよねぇ…なまえちゃあん?」
「……」
「何?やっと自分の身に迫った危険に気付いたの?」
「待って、一松!勘違いしてる。ウェイトウェイト」
「残念だったね、今この家には俺とあんたしかいないよ。他のやつらに助けを求めたって無駄だよ。誰もおまえを助けてくれない。他のやつらだって夜になんないと帰ってこないし、松代は父さんと外食だからね…?」
「いち、むぐっ!」
「うるさい。誘ってきたあんたが悪いんだ。僕はずっと我慢してたのに、あんたがそんな短いスカート履いてくるから…」
「っ、一松!」

その時見ちゃった名前の涙で潤んだ目。
その目に酷く責められているように感じて、僕は今までの勢いのすべてを失った。

「…………ごめん、今の全部忘れて、それかもう僕に関わらないで」
「え、一松?」
「…ほら、さっさと行けよ、帰れよ」
「ちょっと待ってよ、私の話も聞いてよ」
「……なに」
「事を致すならここじゃなくて、布団のある場所がいいなって言おうと思っただけだからそんな怯えた顔しないでくれる?私が悪者みたいじゃん」
「…は?」
「ほら、私のスカートの中。暴こうとしてたんじゃないの…?」
「…え、なまえ、」
「いいよ、一松になら。」

真実から言えば、この僕の幼馴染のかわいい子は、もうずっと他の誰でもない僕のことだけを、ただの幼馴染としては見てなかったってこと。なので、両片思いの関係と。
というよりむしろ、僕が自分のことを好きだと確信してたみたいで僕を色んな方法で誘惑していたつもりらしい。それを聞いた時、思い当たる節がありすぎで爆死しそうになった。なんだよクソ!そういうことなら口で言えよ!わかんねぇだろ!

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20161003

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