短編ログ | ナノ
食べても食べてもなくならない君であれ

これの二人

「名前、十四松が好きなの」
「何でそうなった?」
「どうなの」
「十四松は友達として好きだよ。もちろん一松のこともね」
「なら、名前から俺にキスして、今」
「何でそうなる? そんな絵踏みないなことしなくても一松のことちゃんと好きだから」
「うん、信じる。だからキスして」
「だから何でそうなる!?」
「キスしたいから。俺が名前と」
「ちょ、近い近い」
「………」
「無言で近付いて来ないでっ」
「くっつかなきゃキスできない…」
「や、え、するの?今?」
「え、しないの?今」
「いや、逆になんでする流れになってんだよっ!」
「じゃあ、なんでキスしない流れになるの」
「横暴だね、一松さん」
「俺がしたいって言ってんじゃん」
「や、なんでこいつこんなに強気なの?」
「今からするから目閉じたら?」
「はぁ?わけわかんねっおい!顔固定すんな!」
「まぁ俺は名前とキスできるんなら開けっ放しでもいいけど」
「ちょ、一松!息がかかるっ」
「観念してくださいねぇ、名前ちゃん」
「一松、おまえ今最高にえげつない変態な顔してるからっ!」
「だまって口閉じてろよ、名前」
「んんっ!?」

「…で?」
「……」
「初めてのキッスは満足した?」
「うん、ね…名前…もう一回」
「調子づいてると踏み潰すぞ」
「…っ!名前もう踏んで、る…ん゛んっ!」

これが僕のMに目覚めた瞬間だった。

「記憶の捏造しすぎてんよ一松」
「踏まれたのは確かだよ」
「そうだっけ?」

そうやってヘラヘラ笑うのは僕の幼馴染。母親つながりで小さい頃からの知り合い。僕らの永遠のアイドル、トト子ちゃんとはまた違うポジションの女の子で、僕だけのにしたい子。それが名前。

「そうだよ…」

でも近く、本当に僕だけのにするつもり。最初にキスした時はすげぇ拒否されて泣きそうだったけど、無理やり迫って口づけた唇の感触は、何度重ね合わせたって色褪せることなく僕の中に記憶されて忘れることはない。

心ん中に溢れてる思いを、ほんのちょっとだけでもいい。
どうか、この鈍感な幼馴染に伝わりますように。
刷り込みだって構わない。
だって僕は、君が欲しい。

「名前、キスしたいんだけど」

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20160320
title by ゾウの鼻(http://acht.xria.biz/)

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