桜は散って、君は
どこかに行ってしまうんじゃないかと。
僕の前から居なくなってしまうんじゃないかと。
どうしようもない不安と、無くならない恐怖感。
そんな気持ちに苛まれる。
君は今、目の前に居るのに…何故?
桜の咲いて散るその姿はとても儚い。
それは君と似ているから。
僕はとても怖くなる。
「名前ちゃん…」
「なんでしょう、リクオさま。」
僕が君の名前を呼ぶと、にこりと微笑みながら
君は僕に振り向いてくれる。
だけど、でも。
その儚げな印象は
居なくなってしまいそうな雰囲気は消えてくれない。
「リクオさま?」
「ねぇ、名前ちゃん――――君は」
僕の前から居なくなったりはしないよね?なんて
臆病な僕は訊けないけど
君のこたえを聞くのが怖いから。
そっと頭に乗せられた君の手がすごくあたたかい。
たったそれだけのことなのに
僕は今、泣きそうにうれしいんだ。
まるで僕が壊れ物のようにその手はやさしくやさしく
包み込んでくれるような手付きで頭を撫でられる。
「名前ちゃん……僕、桜がすきなんだ。」
「そうですか…私も桜は好きですよ――」
散って行く姿には切なくなりますけどね、と
微笑む君を、僕は抱き締めたくなった。
「…名前ちゃん。」
「―――急にどうしたんですか、」
「僕はずっと名前と一緒に居たいんだ。」
だからね、お願い。
僕の前から消えて居なくならないで!
僕は君の腰にぎゅっと抱きついてお腹に頭を押し付ける。
君が居なくならないように。
君が離れていかないように。
桜は散って、君は
どこかに行ってしまうんじゃないかと。
僕の前から居なくなってしまうんじゃないかと。
どうしようもない不安と、無くならない恐怖感。
そんな気持ちに苛まれる。
桜の咲いて散るその姿はとても儚い。
それは君と似ているから。
僕はとても怖くなる。
とてもとても。
今はこうして肌で感じられる温もりも
あの桜のように儚く消えて行ってしまったら。
「今日のリクオさまは甘えたさんですね…」
「甘えたさんでもいい。僕は、僕は―――」
子供じみた独占欲と思われてもいい。
だけど、でも。
僕の前から居なくならないでよね?
end
20100509
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桜の姿に君を重ねる
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