短編ログ | ナノ
ナチュラルに拒否される

「今日もたくさんお客さん来たねぇ」
「そうですね、ふー疲れた!」
彼女は名前ちゃん。僕より少し後にバイトに入った女の子で、赤塚大学に通っているらしい。同じ時間帯にシフトに就くことも多くて、連絡先も交換してるし、僕としてはそろそろご飯に行ったり、一緒にショッピングしたりしたいなって思う頃。
きっと名前ちゃんも、同じバイト仲間だと思って警戒心を解いてるだろうし、今日あたりご飯に誘ったらオッケーしてくれるんじゃないかな。
「掃除終わったら松野くんと一緒に上がっていいよ」
「え!いいんですか!店長ありがとうございまーす」
ナイス店長!これってやっと僕に運が向いてきたってことだよね?
名前ちゃんは、嬉しそうな足取りで掃除道具を片付けに行った。心なしか店長の目が、僕にエールを送ってるように見える。このチャンスを逃したら、男が廃るってことだよね、よっし!

「ねーねー名前ちゃん」
「なぁに、トド松くん?」
「お腹空かない?」
エプロンを脱いで、バイトの制服から着替えた名前ちゃんは、これぞまさしく女子!っていう感じの甘めな服装をしてる。バイト中は後ろでポニーテールにしている髪も、今は下ろしていて、ふんわりと自然な感じでカールしていた。正直に言って、やっぱり普通にタイプだ。控えめに言っても可愛い。名前ちゃんとデートできるなら明日の予定をキャンセルしたっていい。
「たしかに空いたね」
「もしよかったらさ、」
「うん?」
「このあと一緒にご飯食べに行かない?」
僕史上、最高のタイミングで誘えた!僕も名前ちゃんもバイト上がりでお腹が空いてる。そして彼女は一人暮らしをしてる。よって、家に帰ってからの料理は面倒とみた。僕と名前ちゃんの関係も、ある程度は信頼を築けてるはず。僕らはバイト仲間であり友達。だからこそ変に意識されないだろうし、逆にこの関係性を利用してもっと親密になれたら…
「あー、これからディナーに行くから」
「えっ」
「え?」
「あー…友だちと?」
「ううん」
「じゃじゃあ、もしかして彼氏…とか?」
「ううん、違うよ?」
あれっ、何この感じ。予想してた答えとぜっんぜん違うんだけど!というより、この時間帯にご飯に誘う=夕食一緒にどう?ってことなんだけど、名前ちゃんの中では夕食≠ディナーなのかな、それともこれって普通に僕とのご飯が嫌だって意思表示なの!?えっどういう意味なの!
「じゃあねトド松くん。また明日」
「あ…うん。また明日、ね!」
「おつかれさまでしたー」
名前ちゃんは笑顔でそう言うと、僕と店長に手を振ってお店を出て行ってしまった。一体どういう意味なのだろうか。まさか完璧なタイミングの誘いを断られるなんて、思ってもみなかったんだけど。スルーされたの、僕?
「はいよー、松野もまた明日頼むぞぉ」
「あ、はい…」

ナチュラルに拒否されるトド松

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20160229
20171012リメイク

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