「カラ松、わたしね、」
「なんだい?子猫ちゃん…」
彼女は名前。実家が由緒あるお金持ちで周囲に集まるのは財産目的の人間ばかり。人が信じられなくなっている、女の子だ。
「カラ松と出会うまでは自分がこんなにも欲張りな人間だったってこと知らなかった」
「そうか?」
この子はいままで、いっぱい騙されてきたんだな。
いっぱい期待して、そのたびに裏切られて。近寄ってくる人は皆、自分の苗字にしか興味が無い人だと思ってる。
それに上辺だけの、それこそお金で美しく飾り立てられた自分しか見てもらえなくて、自分にはまるで、人に受け入れられ、評価されるものなんてないって思ってる。
ほんとはそんなことないのに。
彼女の繊細でやわな心の清らかさとか、俺に優しく手を差し伸べてくれた時の困ったような柔らかな表情だとか、そういう彼女がキラリと輝いているのを知っているのは、この世に何人いるんだろうか。
「俺にとっちゃ、名前の可愛いわがままを、これからはもっと聞き入れたいと思うんだが。どうだろうか?」
「それって…もっと欲張っていいよってこと?」
俺だけが知っていればいいと、俺が心のなかで思っていると彼女が知ったら、一体どんな表情を俺に見せてくれるのだろうか。もしかしたら、黒い目を丸くさせて、その瞳に俺をいっぱいに映して、あどけない表情を見せてくれるかもしれない。
「子猫ちゃんが必死におねだりしてくる姿が余りにも愛らしくてな」
彼女が俺を必要としてくれるなら、俺は彼女の隣り以外に、こんな心地の良い場所を知らない。
「癖になりそうだ」
「……それじゃあ、もうちょっと、その…くっついても、いい?」
「ああ。もちろんだ。おいで、名前」
「うん」
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20160226
title by サンタナインの街角で(http://santanain.xria.biz/)
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