短編ログ | ナノ
愛してしまったと泣くくらいなら

一松くんといると楽。
だって、着飾らなくてもいいし気合いいれて化粧しなくてもいいし、素の私を見てちゃんと評価してくれるもんねー。ちょっと素っ気ない時もあるけど、まあ…それもご愛嬌かな。逆にそのくらいの方がライトな関係とか距離感でつるめるし、
「ほんと、一松くんといっしょだと楽だわ」

「そりゃ、どーも」
こいつ、僕の事どーせ、男だなんて思ってないんだろうな。
たまにほんとに女なの?って言いたくなる時もあるけど(だってこいつの部屋汚いし、料理の味付け大雑把だし)女を感じさせない、ある意味清潔な、男の僕とは違う女らしさが好ましいと思う。あと、必要以上に僕のなかに踏み込んでくる事はしないし。女なのに、口うるさくないし。
だからこそ、大人になってからでも丁度いい距離感でいられるんだろうけど、僕としては、もう少しこいつと親密な仲になりたい…と思ったりしてる。まだ言った事ないけど。
でも、名前といるのが楽だから、今はまだこの関係でもいいかなって思ってる。猫以外の友達がこいつしかいないってのも考えものだよねぇ…
「あ、これうまい」

「ほんと?私にも一口ちょうだいよ」
広く浅く付き合ってきたのが仇になってると自分でも思う。
だって、友達って言って思い付くのはまず一松でしょ。あと数人の女の子だけ…私の交友関係は、一松ほどじゃないけどかなり狭いんだよねー。言っててちょっと悲しくなってきた。だからこそ、なのかなぁ?
一松とのこの先を考えると、どうしても思考停止しちゃうんだよねー
「あっおいしー。私も頼んじゃお」

「一口でかいし。僕のも頼んでよ」
僕がもし、友情のさらに上のものがどうしてもほしくなっちゃたら…こいつはどうするんだろ。
名前のことだから、たぶん拒絶はしないでくれると思うけど…ってか、拒絶なんてされたら僕がどうなるか、こいつ分かってると思うし。まぁ脅迫してまで、こいつとそういう関係になりたいって思ってるわけじゃないし。たぶん。
でも、もし僕が今よりもっと親密になりたいって言えば、動揺するんだろうな。僕も、拒絶はされないにしろ、この友達のような関係にひびが入るようなことはしたくないし、つーかそんな勇気このゴミクズが持ってるはずもないし、
「少しは遠慮とかしなよ、まったく…」

愛してしまったと泣くくらいなら
僕はずっとこの微温湯にいたい

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20160225
20170930加筆修正
title by ゾウの鼻(http://acht.xria.biz/)

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