「フッ…やっと来たかい?カラ松ガール」
俺、松野おそ松。今俺は、することもなく当てもなくダラダラと街を歩いていたとこなんだけど、見ちゃったんだよね〜。次男のカラ松が、女の子と待ち合わせてるとこ!
いつか聞いたことのあるイタい台詞で、カラ松の後ろに近寄っていったその子に声を掛けると、その子は「待たせたな!」とキメ顔で言った。えぇ!何あの子!めっちゃノリいいじゃん!しかもカラ松ちょっと顔赤くない?何あれー自分で言っておいて照れてんの?
「じゃあ…行くか?」
「うん。次はカラ松の好きなとこね〜」
カラ松の隣りを歩いてるその子は、トト子ちゃんほどじゃないけど、けっこー可愛い。ってか、綺麗系な感じ?っていうの?おっぱいは、うーん普通くらい。あ、でも実は着痩せするタイプだったりして…。んで、その子はいじってるスマホの画面をカラ松に見せてる。俺はバレないようにこっそりと、ふたりの会話が聞こえるくらいまで距離を詰めた。
「カラ松ってケーキとかああいうクリームたっぷりの食べるんだね」
「フッ…俺だって、甘い囁きに身をゆだねたいときがあるんだぜ」
「勝手に甘いものは苦手だと思ってたけど…」
「そんなことはないぜ?確かに俺は肉が好きだが、スウィーツもなかなか」
「あ、じゃあ今度ここ行こうよ。前ともだちと行って美味しかったんだ」
てか、あいつら距離近くない?しかも、なんか仲良さげにお喋りしちゃったりしてるし。も〜びっくりだよ!あんな超がつくくらいイッタイ奴と話が通じてて、尚かつ会話が弾んだりしちゃってて、フツーに笑顔見せてる女の子がいるってことに!
も、ももしかして、デート?あいつらデートしちゃってんの!?この長男様を差し置いて、カラ松デートしちゃってるの!?なにそれ、聞いてないんだけど!
ラインを開いて次男以外の連中に『カラ松が女の子と歩いてる!』と送信する。すると、すぐに二件の既読がついた。
『どーせ、おそ松兄さんの見間違えでしょ? カラ松兄さんが女の子と一緒にいるなんてありえないよ』
『カラ松のことだから、道案内でもしてるんじゃない?』
信じてくれない弟たちに『しかも、結構仲良さそう』と文章を作成し、盗撮した後ろ姿の二人の証拠写真を立続けに送った。するとすぐに三件のメッセージが画面に表示された。
『え、まじで?』
『カラ松兄さん、え、もしかしてデートなの?イッタイよねぇ〜』
『クソ松ころす』
四男の言葉が物騒すぎる。それから立続けに『今どこ?』というメッセージが末弟から送られてきて、俺が場所を打ち込んで送信すると、五男以外の松がものの五分で勢揃いした。みんな暇だよなぁ〜!
ちょっとだけカラ松に同情するよ。でも、何も知らせてくれなかったあいつが悪いよな?そりゃあさ〜、俺たちにバレたら即行で邪魔するに決まってるよ?だって、一人だけ抜け駆けして彼女作るとかさぁ、マジで許さねえから。長男より先に彼女とか、マジでねえからな!でも、あの女の子がカラ松の彼女って決まったわけじゃない…よな?
「おそ松兄さん、カラ松兄さんは?」
「さっき、あの店に入ってった」
「古本屋?…え、デートで古本屋ってありえなくない?」
「クソ松って本とか読むの」
「えっ、反応するとこそこ!?…一松、なんかずれてない?つか、カラ松のことで発言するとかお前めずらしくない!?」
「おい、落ち着けよチョロ松!そんな大声で騒いだら、尾行がバレるだろ!」
チョロ松からいつもの赤い松の手ぬぐいを受け取り、それをかぶるとお忍びスタイルの完成だ!カラ松なんにも言ってくんないんだもん。ってことで、俺たち暇人ブラザーズはあいつらを尾行しま〜す!
「つか、あの女」
「あの女って、お前口悪過ぎんよ、一松ぅ〜」
「離れろ、クソ長男。たぶん見たことある…てか、クソ松と同じ部活だった…」
「え〜!嘘でしょ一松兄さん!あんな綺麗な子、演劇部にいた?」
「ちょっと待てよ、なら、あの子って…僕たちと同じ高校の子?」
「ちょ、誰だれだれ!?」
「思い出すから、迫ってくんな気色悪い」
「お前ぇえ!俺に対して辛辣じゃね?まだ缶詰のこと根に持ってんの!?」
「おい長男!お前また人の食べ物盗み食いしたのかよ!」
「わわっ!ちょっと、兄さんたちやめなよ!あっ!カラ松兄さんたち出てくるよ!」
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20160224
title by サンタナインの街角で(http://santanain.xria.biz/)
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