※姉
「はい、一松さん。私が楽しみにとっておいたデザート食べましたね?」
「あんたが楽しみにとっておいたデザート? 僕は知りませんね、そんなプリン」
「早速ボロが出ましたよ、一松さん。さっさと白状して楽になりましょうよ」
「はて?僕にはあんたがなにを言っているのか、さっぱりですね」
「白々しいですね、一松さん。口の端にカラメルソース付けておいて…今更言い逃れられるとでも思っているのですか?」
「……確かに、僕は冷蔵庫にあったプリンを食べました」
「ほら!私の目に狂いはなかった!一松さん、やはりあなたが今回のプリン消滅事件の犯人だ!」
「けれど…」
「けれど?この期に及んで、何を言うつもりなんですか?」
「そのプリンが、あんたが楽しみにとっておいたという『プリン』と同一のものであることは証明できないはずだ!」
「いいえ、犯人はあなたしかいないんですよ、一松さん」
「証拠だァ…。証拠を見せろ!」
「証拠ですか?それなら、さっきあなたがパーカーのポケットに隠したプリンのカップを机の上に出してください」
「な、なぜ!? なぜ僕が、とっさにプリンのカップをポケットに仕舞ったことを知っているんだ!」
「それは、このニャンコが教えてくれました」
「た…ただの猫じゃないか!そんな猫が証人になるわけが…」
「舐めないでいただきたい。この子はただのニャンコではありません。このニャンコは、人が包み隠している本音を見通す特殊能力が備わったエスパーニャンコなのです!」
「くっ…」
「私の帰宅とともに焦って、己の犯行を隠蔽しようとした一松さんの一部始終をこのエスパーニャンコが見ていました。もう、言い逃れはできませんよ?」
「なに!? 裏切ったな、エスパーニャンコ!」
『にゃおん』
:
「一松。姉さんになにか言うことは?」
「姉さんのプリン、知らなかったとはいえ、勝手に食べてごめんなさい」
「素直に自分の非を認めたね。えらいよ、一松。今回は許してあげよう」
「まじすか。へへ、あざーす」
「寛大な姉に感謝してよね?」
「なんて心の広い姉さんやー ほんまおおきにー」
『にゃー』
これでほんとは、姉さんのだって知ってて食べた確信犯だってこと、この人が知ったら、僕のことどんな風に怒るのかな。ま、姉さんに嫌われるのとかありえないから、ほんとのことは言わないし言えないけど。エスパーニャンコと姉さんがどうやって意思疎通したのか知らないけど、薬の効果が切れててほんとに助かったわー。
::::
20160220
確信犯一松
::210::
×|◎|×
ページ: