短編ログ | ナノ
ありふれた明日が欲しい

「証拠は挙がってんだ!白状しろ一松」

おそ松がバァンとちゃぶ台を叩いた。

「なに、突然…うるさいんだけど」
「こっちには十四松の証言もある」

おそ松に引っぱり込まれた十四松は、きょろりんと目を動かして不機嫌そうな一松を見た。

「なになになに!??やきう?やきうすんのかなー?」
「野球じゃないよ、十四松。で、この女の子はだれ?」

優しい声で訂正をしたチョロ松は、一枚の写真をちゃぶ台の上に乗せた。

「え、名前じゃん。てかこれ盗撮?」
「名前?名前ちゃんっていうの?どういう関係なの、一松」

一松の呟きを漏らさず拾ったトド松が質問する。

「同じクラスの人」

その発言に対して、またおそ松がちゃぶ台をバンバン叩いて糾弾した。

「ただの同じクラスの人が、お前とこんなに仲良く歩いてるわけねえじゃん!お前、俺らに内緒でつきあってんじゃねぇの!?長男差し置いてカノジョとか、ダメ!ぜったいダメ!」

そこに冷静なチョロ松のツッコミが入る。

「いや、お前それ兄弟の順番とか関係ねぇから!そういうのは一松の自由だから!」

しかし抜け目ないトド松が、一松を覗き込むように尋ねた。

「で、リアルな関係は?」
「セクロス?セクロス!」

「関係?…知り合い以上友達未満。ほんとにただのクラスメイトだし、あんたらが期待するような関係じゃないから」

「とか言いつつ、心なしかこの写真の一松兄さんデレデレしてない?しかも、結構かわいい子だよね、名前ちゃん」

一松は思わずトド松の発言に視線を尖らせた。それを見たおそ松が、にやりと嫌らしい笑みを浮かべて口を開いた。

「ホントはヤりたいなぁーって思ってんじゃないの?一松くぅーん」

バシンッ!
今度は一松がちゃぶ台を叩いた。十四松の目が猫目になった。

「うるせえ!黙れ!おそ松兄さんってまじでデリカシーないね!それに、僕は今の名前との関係に満足してるし、この前はこんなクズな僕を友達だって言ってくれたし、デレデレもするわ!だって、僕にできたはじめての友達だから!」

ちゃぶ台がひっくり返らなかったのは、チョロ松とトド松が押さえたからだ。おそ松は一松がそんなに怒ると思わず、驚いて謝った。

「ご、ごめん…」
「あーぁ、もし兄弟でも僕らの邪魔をしようものなら覚悟しておいてね。僕、血の繋がった兄弟にも何するかわかんないから…」

ゆらぁりと顔を上げた一松が、部屋にいる兄弟中を舐めるように見回しながら言った。その目にハイライトは全くない闇の目だ。視線には殺意さえ込められている。

「お、おい…一松。なんか禍々しいオーラが空間を埋め尽くしてきてるんだけど、おい!」

チョロ松は青い顔で、抱き締め合って震えているおそ松とトド松を見た。片方の口の端を器用に上げた一松は、ゆらりと長兄と末弟を見て言った。

「おそ松兄さんもトド松も…兄弟の中から犯罪者は出したくないよねぇ?フヒッ…」
「その顔ヤメテーーー!!闇松兄さん!」

トド松の悲鳴のような声が、六つ子の部屋に響いた。



「今帰ったぜ、マイ・ブラザーズ!そして、今日は一松にキュートな客人がいるぜ!」

そこへ空気の読めない次男が入ってきた。今の一松以外の松には、いつもは空気なカラ松がヒーローに見えたらしい。

「だまってろクソ松!俺に話しかけんな」
「一松くん、お兄さんにそれはないんじゃない?」

その声を耳にした途端、一松がピシリと固まった。

「えっ…。名前…ちゃん?」

カラ松の背中からひょこりと現れたのは、渦中の彼女だった。

「お邪魔します。苗字名前です。いつも一松くんと、仲良くさせていただいてます」

「「「 本 人 様 来 た ! ! ! ! 」」」

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20160110
20170929加筆修正
title by サンタナインの街角で(http://santanain.xria.biz/)

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