短編ログ | ナノ
ギャップ萌え

「前から思ってたけど、ボクと写真撮るときさ、いちいち顔キメてこなくていいから」
「そうか? おそ松はカッコいいって言ってくれるぞ?」
「なんかカラ松兄さんと撮ってるみたいで、気分悪い。」
「ついしちゃうんだよ、仕方ないだろ?」
「あぁ、もう!名前いや!その喋り方いや!」
「ん?どんな喋り方をしても俺の勝手だろう?」
「イタいカラ松兄さんと喋ってるみたいでいや!戻して、もっと女の子っぽく喋ってよ」
僕ら六つ子とは、高校からの付き合いで、名前ちゃんは演劇部だった。高校生時代、一番長い時間をその子とすごしたのは(ホント、ムカつくけど仕方ないよね)同じ部活の次男カラ松で、僕は「自分が一番最初に仲良くなったのに!兄さんたちに紹介するんじゃなかった!」と今でも不満に思っている。
高校生の頃は気付かなかったけれど、僕はどうやら、舞台上の彼女と普段の彼女とのギャップに心を打ち抜かれてしまい、それ以降彼女の存在が心の中から消えなかった。高校を卒業して、僕らはニートに転落。そして県外の大学へ進学をする彼女と離ればなれになってしまったが、名前ちゃんの専攻のキャンパスが移転することになって戻ってくることになったらしい!
いつか会いたいと思ってた僕は、彼女のバイト先で運命の再会を果たすんだけど…そのバイト先というのが、男装喫茶である。その男装喫茶は、僕の女の子の友達に連れられて行った場所であり、最初は「なんだか似ている人がいるなぁ」と思って余計に会いたくなったんだけど「お客様、失礼ですが松野トド松さまでいらっしゃいますか?」と声を掛けられたことで、本人と判明!衝撃だったね。
すっかり、ニートになってしまった僕は、彼女に今の自分の生活を打ち明けたら嫌われてしまうと思って黙っていたんだけど、僕には五人の足かせ…五人の悪魔がいるからね。彼女が小遣い稼ぎのモデルのアルバイトの帰りに、おそ松たちと遭遇し「俺ら六つ子みーんな、ニート!」とバラされちゃったんだ。その夜は涙で枕を濡らしたけれど、でも!親のすねかじりニートだと知っても、態度を変えなかった彼女は、また昔みたいに一緒に遊ぼうと誘ってくれたので、僕は今積極的にアピールしている真っ最中なのである。
「今名前はボクとデートしてるんでしょ?ここは職場じゃないの!」
「…ごめんな。しばらく仕事漬けだったから、口調が定まらなくて…トド松がお…わたしの息抜きに誘ってくれたこと気付いてたんだけど…トド松が嫌な気分になるなら、今日はもう帰ろ?」
「え…名前?」
「無理してわたしの気分転換に付き合う必要はないし、わたしは、トド松にはわたしといて楽しいって思ってもらいたいから…」
「…っ!」
「トド松…?」
たまんない。たまんないよ、名前ちゃん。このギャップが、ボクをますます彼女の虜にさせるんだ。
「ごめん、名前ちゃん。ボクはどんな名前と一緒にいたって、楽しいって思ってるよ」
「あ、ありがと…」
「男の子みたいな時の名前もかっこよくて好きだよ。でも、ボクの前だけで見せてくれる名前ちゃんの女の子の顔がもっとみたいなぁって思って、だからいやだって言っちゃったんだ」
「…うん」
「ねぇ、名前ちゃん。名前ちゃんのそういうかわいいところ、これからもずっとボクだけに見せてくれない?」
「え、それって…」
「ん?あぁ、分かりにくかった?…ボクが言いたいことは」
付き合おうってことなんだけど、今度は分かってくれた?ふふ。顔が真っ赤だね、名前ちゃん。これからよろしく。それじゃあ、行こっか!

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20160107
20170929修正

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