眠たいよー眠たいよー。あー私の脳みそよ、どうか目覚めておくれよ。
「x=8なら、ここのyはーーーでーーは2yとなりーーー……」
あぁーーー!やっぱ無理ぃいぃぃい!朝から数学だなんて、やれる訳ないじゃん。あーもう、早く終わってくれないかな〜…ほら、武だって寝ちゃってるし。私も真面目に授業なんて受けずに寝ちゃおっかなぁ〜。
私の斜め前の席の武は教科書を立てて、その影に隠れるようにしてスヤスヤ眠っている。あぁ、もう!かわいい奴だな。
…――キーン コーン カーン コーン―――…
「それでは、今日の授業はここまで!しっかり家で復習してくるようにな。」
私は先生の大声で現実世界へと引き戻された。あーもう、折角良い夢(たぶん)を見てたのに…先生の大声の所為で…。
「あと、それから――名前と山本は放課後に職員室へ来るように、と言っておきなさい。」
「へぁ…ちょ!先生っ!私は起きてましたってば!」
覚醒した私の耳に届いた、嫌ぁ〜な言葉。え、え?なになに?…放課後に職員室まで呼び出しですかっ!?
「おぉ、名前起きてたのか?」
「起きてましたって!授業中にスヤスヤと気持ち良さそうに眠ってたのは武だけですってば!」
今日だけは呼び出しは食らいたくない!何たって、私の大好きな刑事物のドラマの再放送の日なのだから!
「おいおい!名前、そりゃひでーのな!」
「ひでーのな…って武ーーーーーっ!」
私がそう叫んでいる間に、武も目が覚めたみたいだ。あぁ、ぴょこん、と跳ねたその寝癖ですら、愛しく思うよ。
「おう、っはよ!名前。」
「あ、うん。おはよ。」
そして、武と私は何事も無かったようにあいさつを交わした。
「先生!オレが見た時には、すでに名前は寝てたぜ?」
「はぁ!?…ちょ、武っ!!」
「気持ち良さそうだったのな。だからオレもつられて…」
「だぁーーー!先生!武の方が先に寝てました!」
私は奇声を発して武の言葉を遮ろうと試みるが、それは無理だった。
「違うのな!先生!!名前の方がオレよりもずっと先に寝てたのな」
「ちーーがいますってば、先生!私は武よりも先になんて寝てませんって!」
「いや、オレは名前の寝てる姿みて、すんげぇ気持ち良さそうに寝てるから、つられて…」
それからしばらく武と私は言い合いになる。
「いえいえいえ…武の方が私なんかよりもずっと、気持ち良さそうでした!」
「そんなこたぁーねぇのな!名前の方がオレなんかよりもずっとかわいい寝顔してたのな!」
「私なんて全然だよ!先生!武の方が私よりもずっとかわいい寝顔してました!」
「はぁ?ちげぇのな!オレなんかより名前の方がかわいいって」
「何言ってるの!武の方が私なんかよりもずっとずぅ〜〜とかわいいよ?」
「っ…名前、分かってねぇーのな!」
「なにをぉお!!」
「名前がオレなんかよりもずっとずっとずぅーーーとかわいいのは、もう決まってることなんだぜ?」
「!!!……そ、そんなこと言われても!」
武の言葉で私は照れてしまって、顔が真っ赤に染まる。なんだか体中が熱いです。熱いんです、先生!
「「先生!オレ/私)と名前/武)の寝顔はどっちの方がかわいかったですかっ!!」」
私と武は息ぴったりで先生の方へ振り向き、一気に訊ねた。先生は呆れたように、でも驚いたような表情をして一言。
「お前らの仲が良いことは分かったから、放課後に二人とも職員室へ来なさい!」
結局その日の放課後に武と私は呼び出されて、職員室で説教を食らうことになった。私の大好きな刑事物のドラマの再放送が見れなかったのは言うまでもない。
そして、先生は私達に素敵なプレゼントを用意してくださった。…わざわざ、こんなものを寄越さなくたっていいじゃない!
授業の一回や二回程度、寝てたって大丈夫なんです…あーすみませんすみあません!だから…はい、すみません、ごめんなさい。もう要りません。本当に大丈夫です。
私の考えていることは口には出していないはずなのだが、顔に出てるのか?先生は「なんだ、文句でもあるのならプリントを増やそうか?」と脅してきた。…いや、脅してはいないのだろうが。
私と武が二人仲良く、数学のプリントをやったのはまた別の話。
end
20100419
20121028 修正
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お初の山本(^o^)
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