短編ログ | ナノ
エトワールの雫

※学生松

(えっ!!)
それは、委員会が終わった後の教室での出来事だった。僕と同じクラスの女子で、僕の前の席のあの子が泣いていたんだ。誰も居ない放課後の教室。いつもはざわざわ騒がしいのに、今はその子の泣き声しか聞こえない。女の子が泣いてるなんて。それも、少し気になっている子、苗字名前ちゃんだ。カラ松と同じ演劇部で、きれいさとかわいさを合わせ持つようなそんな子。
「ちょ、チョロ松くっ…ん…うぇええっ…!」
女の子の泣き止ませ方なんて、男兄弟のど真ん中で育ってきたこの僕が知っている訳でもなくて、おそ松兄さんみたいに兄力を発揮できる性分もしてないし、何があったのかもさっぱり見当もつかないし。彼女の制服とか机列もとくに目立って乱れてる訳じゃないし、誰かに乱暴されたってこともなさそうで…本当に、どうすればいいんだろう。取り敢えず、彼女が僕の名前を呼んだから、十四松みたいな勢いで彼女の傍まで来たは良いんだけど…ね。なにをどうしてあげるのが正解なのか、ぜっんぜん分らない!
「どこか痛いの、名前?誰かになにか嫌なことされたの!?もっもももしかしてうちのバカな兄弟たちになにかされた!?」
「ち、ちがうよ、そんなんじゃっ…ないっけど…ぐずっ」
「ご、ごごごめんねぇ、おっおおお俺、気が利かなくて!あっごしごし擦っちゃだめだってば!は、ハンカチ。ぼ、ぼぼぼくのでよかったら、てか、僕のハンカチしか、ないけど。こ、これ使って、」
「んっ…あっ、りがどう…」
ぬぁああああああ!!!なんで僕はこんなことしか言えないんだ!泣いてる女の子に対しての耐性なさすぎ!これって僕が童貞だから!?ていうか、トド松ならもっと上手く慰めてやることができただろうに。というか、なんで僕この土壇場で彼女のことナチュラルに呼び捨てにしたんだ!?どうしよ、彼女に『なんでこいつに名前呼び捨てにされなきゃなんないの?』とか思われてないよね?うわあぁあああああああぁあ!!!そう思われてたら最悪だ!ほんとだめ!僕こういうの絶対向いてない!なにこれ、涙目の名前ちゃんかわいすぎ!むり!

「すっ少しは落ち着いた…かな?」
「ん……取り乱してて…ごめん。あと、ハンカチ…汚しちゃった…ごめん…」
「そ、そんなこと、気にしないで!…えと、その…どうして泣いてたか聞いてもいいかな?」
「え…?」
ぬがぁああああああ!!!ずぇっっったい、変な誤解をされちゃったってこの子に!何か言わなきゃ、一生俺は泣いてる女の子の傷口に野次馬精神で塩を塗り込むような真似をするド変態って思われる!がんばれ、チョロ松!ここはあくまでも、彼女が話したかったは話せばいいのだし、無理に聞き出そうだなんてしちゃダメだ!そんなことは言語道断!よーし…。変な気負いと緊張で口の中が乾いてきたけれど、僕はゴグリと喉を鳴らして話した。
「えっ!いやぁ、その!べ、べ別に名前ちゃんが話したくなかったら、もちろん話さなくていいんだよ!だ、だけど、でも、話したら、少しその…楽になるんじゃないかなって僕は思って、その…深い意味はないんだ!ごめん!」
「…チョロ松くん、必死すぎ。…でもありがとう」
「う、うん。ど、どういたしまして」
なんなのその笑顔!涙で潤んだ瞳との相乗効果によって、僕を殺そうとしてきてるよ!もうほんと耐性ないんだから、勘弁してよ!もう普通に可愛い!名前ちゃんのこと普通に好き!!!!
「あのね、私が泣いてた理由は、その…恥ずかしい話なんだけど」
「う、うん…」
「次の舞台の台本の、エトワールっていうキャラクターに感情移入しちゃって」
「えと、えと…?」
「エトワール。かわいそうなお星様の男の子なの」
「おと…?名前ちゃん、次の舞台では男の子の役をするの?」
「うん。人数の関係でね。ちなみに、カラ松はノワールっていう夜の支配者を演じるんだよ」
「え…あいつが、夜の支配者?」
「ふふ。結構、はまり役なんだよ。あのキリッとした表情がまたたまらなくステキ」
え、もしかしてこの子、カラ松のことが好きなの?え…えぇえええええええぇええぇええええーーー!!!

::::
20160106
…みたいな感じで、次男を褒める女の子にもやもやした気持ちを抱きながら、舞台の上で演じる彼女に見惚れたり、舞台を降りた普段の彼女と関わっているうちにどんどん好きになっていく、そんなカラ松と同じ演劇部で感情表現豊かで涙脆い同級生と三男のピュワーなお話が読みたいです。

::185::

×||×
ページ: