※これの二人
※学生松
僕は自分に自信がない。たった二文字、彼女に伝えることができれば、もしかしたら。もちろん、きっと、絶対、そんなことはないと思うけれど、もしかしたら、ほんとうに、少しは、楽になれるのかもしれない。この息苦しさからも、この胸の痛みからも、手の痺れ、足の震えからも解放されるかもしれない。ああ、もう。本当に苦しいんだ。もうずっと、君が僕に微笑んだ時から、君が君の優しい声で僕の名を呼んだあの時から、ずっとずっと苦しいんだ。たった二文字。彼女に伝えられたら、と思う。でも、想像するだけで吐気がする。でも、もし違ったら。本当に僕はどうしようもない人間で、ゴミだ。自信もなけりゃ、勇気もない。たった二文字は、されど二文字。ずっと僕を苦しめる呪文。呪いの言葉。この二文字を伝えて彼女に気持ち悪がられたら。嫌われたら。弱い僕が顔を出す。その時は僕、もう、たぶん、生きてはいられないから。彼女に拒絶された僕は、もうこの世界にはいらない。ゴミとして存在を許された僕だけど、存在する価値もなくなっちゃう。ぐるぐると腹の中で蜷局を巻くように渦巻くこの感情を、吐き出してしまいたかった。でも、そうできないのは、そうさせないのは、僕自身だった。ああ、本当に、嫌になる。自分が自分で嫌になる。だけど、でも、君が君だから仕方がない。もう、どうしようもない。僕は君が、君が。君のことが、す…す…
「ごめん、もう待てないや」
斜め前に座って本を読んでいた彼女の白くてしなやかな細い指が、僕のたいして苦労もしてない汚い手にするっと絡み付いてぎゅっと握った。僕の手を握った。彼女の手が。え、え。もう待てないって、どういうこと。どうして?
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20160106
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