※姉
いつもマスクをして顔を覆い隠し、自分の気持ちを話したがらず、へそ曲がりで捻くれたことしか言わない私の可愛い四番目の弟。私のことが大切で、もちろん大好きだけど(ほらそこ、自信過剰だなんて言わない!)素直に口に出すことはない。
私もそんな四男のことは分かってて、普段は不満もなにも言わないけれど、もう少し素直に甘えてきてくれたらなぁとは思う。そしたらこちらも彼をドロドロに甘やかしてあげられるのになぁ、とは思っていた。
そしたらある日の六つ子だけの宅飲み(私は仕事で残業中)で、いつもはセーブする(とは言っても、四男はアルコールに強くないため、眠ってしまうのでいつも次男におぶわれて帰ってくる)のに、家で飲んでるっていう余裕があったのだろうね。長男が飲むような強いお酒を飲んじゃったみたい。
私が会社から帰ってくると、ベロベロに酔っ払った四男だけを居間に残して(次男はそこらへんで寝落ちしてるし)他の兄弟たちはさっさと寝床に行ってしまったらしい。まったく薄情なやつらだな。それでも六つ子か。
とりあえず、四男に声をかけ(次男には毛布をかけてあげた)トントンと背中をやさしく叩いて起こすことにした。そしたらなぜか、ほろっと泣き出した四男に私はびっくり仰天だった。
「え、ちょっと…ティッシュ、はい」
「ねぇっさん…」
えぐえぐと泣く四男。突然の涙に驚いたが、自分の弱い部分を曝け出してきている弟は可愛い。なんだか幼い頃に戻ったみたいだ。ぺったりくっついてくる四男の好きにさせると、どうやらちょっとずつ涙も落ち着いてきたらしい。私のカッターシャツの二の腕の部分に顔を押し付けてグリグリしてくる。涙とか、鼻水がついちゃうけど、可愛い弟の手前、気にしなくていいや。
「一松、寝に行こう? 立てる?」
「姉さんといっしょがいい」
普段もこれくらい素直で可愛い弟でいてくれたら、毎晩添い寝だってしてあげるのにね。なんて、どうせ明日になったらこのことを覚えていない四男のボサボサの頭を撫でながら、缶に残った飲みかけのチューハイを喉の奥に流し込んだのだった。
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20151221
20170929加筆修正
title by まよい庭火(http://niwabi.kitunebi.com/)
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