「ねぇ、お願い!
雷がこわいから、一緒に寝て!」
十五歳にもなって、二歳年上のスクアーロに頼むことでは無いことぐらいちゃんとわかってる。
だけど、でも――――……私はそう頼まずにはいられない。だって私は彼のこと、
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ゴロゴロゴロ…
さっきから激しい雷がなっている。雨もひどくなってきやがった。
オレが任務から帰ってきた時ぱらついてはいたが、こりゃあ…本格的に振ってきやがったみたいだぁ。今晩もあいつはオレの部屋に来るんだろうなぁ。
雷の鳴り響く夜、オレはそんなことを考えていた。
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控えめな小さいノック音が聞こえる。そして、あいつの綺麗な声も。
「ねぇ、スクアーロ起きてる?私よ、名前よ。開けて。」
「開いてるぞぉぉ…入ってこい。」
「よかったぁ…お邪魔しまーす。」
「おぉ。」
扉を開けてオレの部屋に入ってきたのは、思った通り。寝間着姿の名前だった。
「ねぇ、お願いスクアーロ!雷がこわいから、一緒に寝て。」
少し上目遣いで、腕に抱えている枕をぎゅっと握りしめながら言う名前。
う"お"ぉおおおぉおおぉお"い"ぃ!何だこのクソ可愛い生物はぁ!!
(いい加減、俺の枷も外れそうだぞぉ…。)
しかし、名前はこれを無自覚でやっているのだから、おそろしい。オレじゃなかったら、きっと襲われてるぞ。
「スクアーロー……だめ?」
今度は首を右にこてんっ、と傾けて来やがった!ちくしょう!可愛い!!
オレの理性がどこまで保つか分からねぇ…だが、名前の頼みをこのオレが断れる訳も無く。仕方なく部屋へと招き入れた自分の甘さが、自分の首を絞める。
▼▼▼
私がスクアーロの部屋へと入ったあと、最近のことについてなど話をした。やっぱり、スクアーロと一緒の時が一番落ち着ける。
私はマーモンとの任務が多いから、スクアーロとも任務がしたい、って言ったらダメだと言われた。
理由を訊ねると、スクアーロは見ていて面白いくらいに顔を赤くしたり青くしたりする。
「っもう遅いから、寝ろ…名前。明日の任務に響くだろぉ!」
スクアーロ、今何を考えているのかな?
私はスクアーロのことしか考えてないし、スクアーロのことしか考えられないんだよ。
「はーい」
わからないけど、わからないままでもいいかな…なんて思った。
おやすみ、の言葉を交わしたあと。あたたかなスクアーロの温もりを肌で感じ、私は眠りにつく。
ねぇ、スクアーロ。
ほんとうはね、私…雷がこわい訳じゃないんだよ。だけど、今日はもう眠いから、寝るね。
▼▼▼
オレはベッドの中、自分の傍でベッドの面積を占領して眠っている名前を見ていた。占領と言ってもダブルベッドにもともと小柄なこいつが寝ているだけだがなぁ。
もちろんオレが寝る分のスペース的には何の問題もねぇ。問題なのはむしろオレの方だぁ。オレは自嘲的に笑う。
「なぁ、名前…」
可愛い寝顔しやがって。
お前は今、どんな夢を見てるんだぁ?その夢に、オレが出てきているか?
ときどき落ちる雷のその大きな音にびくり、と眠っていても反応する名前。肩を震わせる名前を見るとオレは思わず抱き締めたくなる衝動にかられる。
オレのがっしりした右手がそれに似つかわしくないほど優しい手つきで名前の髪を撫でている。オレらしくねぇ、と思うがこいつに触れている時はどうもこうなっちまう。
こいつの髪はやわらけぇ…それにすげぇ、くすぐったい気持ちになる。だけどあったかくて、いいにおいで、心地良いんだぁ…すごくな。
ふと、髪を撫でていたオレの手が止まる。
『すくあーろ…ね、――――き』
その名前の寝言を聞いた時。オレは思わず耳を疑った。それで、ますますオレは寝付けなくなってしまった。
▼▼▼
ねぇ、スクアーロ。
ほんとうはね、私…雷がこわくて眠れない訳じゃないんだよ。
ほんとうはね、スクアーロのことが大好きだから。
短くて長い眠りの時間を少しでも一緒に過ごしていたいから、そう思ってずっとずっと。
雷がこわい訳じゃない。
end
(こわがるのは、ただ私が君と居たいだけの口実に過ぎない)
20100418
20101114 修正
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