※彼の優しい背中が永遠でありますよう 続き?
当事者たち
「先輩の手ってすごいですよね。」
「え、どうして?」
「こうして撫でてもらうと、不思議と痛みが和らぐんです。」
「気のせいだよ。」
「そうですね。気のせいかもしれないです。」
いつからだろう。僕が先輩のところへ行くようになったのは…。それはもう、思い出せないくらい前のことなのかもしれないし、ただ単に僕が忘れているだけなのかもしれない。
「今日はなんだか甘えたさんだね。」
「そういう日もあるんです。」
「はいはい。」
僕は、彼女の慈愛に満ち満ちたすこし冷たい手のとりこになってしまった。きっかけは、もう この際何だったかなんて、冷たいのに生温いにおいとか、感触とか、そういう彼女の――先輩を構成する全てのものに溺れてしまった僕にはどうでもいい。
「ミョウジ先輩、すきです。」
「レギュラスくんは、素直だね。」
そう言って、先輩は僕にそのやわらかい手で「いいこいいこ」をする。僕は先輩からこうしてもらうのが好きだ。遠い昔に感じたやわらかくて、あたたかい記憶が思い起こされて、切ない気持ちになる。もしかしたら、そのうち僕は泣いてしまうかも。
「先輩は僕のこと、すきですか?」
「わかってるくせに。」
「先輩は素直じゃないですね。」
「はいはい。レギュラスのこと嫌いじゃないよ。」
もっと、もっとと、欲しがる僕はまるで子供だ。乳をねだる赤子のような僕を、いつくしみの眼差しと柔らかな手をもって包み込む…さながら、先輩は母のようだと思う。だから、こんなにも僕は切なくなって、寂しくなって、溢れる気持ちが、いつか頬を濡らしてしまうのか。
「なんとでも言いなさい。」
「耳が赤いですよ。」
「…はいはい。もう、すきだよ、レギュラス。」
「…! ありがとうございます。」
冷たい手の平が心地好い。と思っていたら、じわじわと染まる頬や耳につられて、指の先まであたたかくなってきました。先輩、先輩。すきですよ。だいすきです。だから、もう少しだけ…この手は僕のものに。
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20130216
title by 彼女の為に泣いた(http://rura.4.tool.ms/)
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