短編ログ | ナノ
冬の寒さと、君と。

それは、他の三人とは時間がずれてしまい僕だけ大広間で、夕食をとっていた時のこと。

ひとり寂しく、ケーキの最後の一口を食べていた。白いクリームが絶妙で、寂しい僕をしあわせな気分にしてくれる。


「リーマス。わたしを、ぎゅってして。」


ガタッと椅子を引く音が聞こえて、黄色いタイが視界の端に映る。同じ学年のナマエが、とつぜん僕にそう言ってきた。


「急にどうしたの、ナマエ?」
「なんだかわたし、急に人肌恋しくなって…」
「ちょ、チョコでも食べる?」
「チョコはいらんよ。」


いつも一緒にいる友だちはどうしたの?と僕が彼女に問えば「お宅の種犬さんに用事があるそうよ」と、返事がきた。おいおいシリウス。君は一体彼女に何をしたんだい?(種犬だなんて、)


「だから、リーマス、ぎゅってして!」
「ぎゅってしてって言われても…ここ、大広間だよ?」
「それだから、なに?」
「だって、大広間だよ?」


そんな必死そうな顔をしなくたって!…じゃなくて僕以外の女の友だちにやってもらえばいいじゃない。ひと恋しくなったからって、僕にお願いするようなことじゃないよ。君のそれ、は。


「だから、なんだって言うのよ。」
「他に人がたくさんいるじゃないか。」
「なに。リーマスは、大広間じゃ、わたしを抱けないってこと?」
「ちょっと、声が大きいってナマエ!!」


彼女はたまに、口からバズーカ…予告無くミサイルを発射する時がある。つまり、今がその時だね。


「それにその言葉だと、意味が違って聞こえるからねっ!!?」
「ふーん…リーマスはわたしをぎゅってするのが嫌なんだ。ふーん。」
「別にそうは言ってないでしょ!」
「だったら、さっさと、ぎゅってして!」


ツンと拗ねたように、形のよい唇を尖らせて「ふーん。」と言う。僕が反論すれば、やわらかそうな髪の毛を鋭くなびかせてにらんできた。


「っ!〜〜〜なんで、わからないかなぁ…。」
「はぁ?なんのことさ!」
「君は、大勢の人に僕からぎゅってされるのを見られて平気なの?ってこと!」


ちょっと声を張り上げて言えば、彼女はきょとんとした表情で僕を見つめ返す。あれ?僕の認識間違ってる?だいたいそう言うものじゃないの?あーもう、この子の取り扱い説明書は落ちてませんかー!?


「え、リーマス…そんなこと気にしてたの?」
「きっ気にするに決まってるよ!」
「わたしは、リーマスからぎゅってされるなら、」


伏目がちに頬を染めて、一旦僕から目を離してのち「どこでされても平気だし。」ってねぇ、ダメだと思いませんか?これは、何なの?ドッキリなの?誰が仕掛けたの?もしかして、ジェームズなの?何処かで撮ってる?撮ってるの?ねぇ!?(勘違いしちゃうよ、僕は!)


「平気って、ナマエねぇ…。変な意味で期待しちゃうからね、僕。」
「それで?」
「へ?」


あ、僕の言葉は、スルーですか。こころなしか、目から汗が流れてきているような気が…うん。


「リーマスは、わたしを今、ここで、ぎゅってしてくれるの?してくれないの?」
「〜〜〜っ、もう!」


ぎゅぅぅううう〜!!


「ほら、もう。これで満足?ナマエ!」
「…うん。」


僕はなにかを察知して、とりあえず背中から腕を外して彼女と距離をとった。あ、あれ?ナマエの様子がちょっと、変。想像してた態度となんか違うって言うか、ぽわんとしてるって言うか…。少し下の位置にある彼女のほんのり赤い顔を覗こうと思って、肩に手をおく。


「え、ちょっと、どうしたの?」


これは…僕、本格的に勘違いしちゃうよ?いいの?いいよね、構わないよね?


「やっぱり…、想像通りだよ。リーマスあったかい!!」
「なっ、ちょっ!ナマエさん!?密着度が、密着度がっ!!」
「ふふふ〜。リーマスは、いっつもチョコをどこかに
 隠し持ってるから、からだ中から甘くて好いにおいがする。」


一度、遠ざかっていた僕とナマエの距離が、また近くなった。よくよく考えてみると、ナマエって僕より背が低かったんだなぁ…とか。睫毛も長いし、ほっぺもやわらかそうだし、何か好い匂いするし。

「待ってってば!嗅ぐんじゃないよ、へ、変態!」と僕が言えば「おんなのこに変態はないんじゃない?」と近距離でジト目をするナマエ。そして、顔を胸板あたりにぐりぐりと押し付けられる。なんかちょっと、もう…小動物みたいでかわいいんだけど!


「こんな要求しておいてだね、くんくん顔を胸に押し付けられてたら…。
 それは変態以外の何者でもないよね。変態の極みだよ、ナマエ。」
「リーマス限定なら、わたし。変態になれる自信あるのに。」
「そんな自信、最初から無くていいよ。」


冷たく言い放ってみるも、その時僕にはもう余裕はなくて…。より一層、近付いたこの距離が、どうしようもなく愛おしい。僕は、このぬくもりを離したくないと、そう思った。


「リーマスは甘くて、でも、以外とがっちりしてて、あったかくてさ。」
「ナマエ…?」

「やっぱり、すきだよ。リーマス。」


(それは、反則だよね。)

視界の端に映った、彼女の真っ赤な耳が、すべてを語っている様で…。僕はうぬぼれてもいいのかな?勘違いしちゃってもいいのかな?


「ナマエ…」
「え…?」


(セーブが効かなくなっても、僕をうらまないでね?)


冬と寒さと、君と。
それから、あまい僕。



-fin-

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20121111

ぽちぽち書いてたら、なんか長くなったよ!
リハビリがリハビリになんない乙\^o^/

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