「わ、笑いたければ笑えばいいじゃん!」
「いや…笑うなんてぶぶっ…
彼女がこ、こんな…じょうたっぶふっ…なのに、
彼氏であるおっ俺が、笑うなんて…出来るかよ…ぷぷっ」
「あのね、銀時。
それがもうすでに笑ってるのよ!」
もしかして、銀時自覚無しで笑ってるの?…いや、どうせアイツの事だ。知ってて笑っているに違いない。あれは、堪えているとは全然言えない。
この歳になって、お風呂でのぼせるなんで思わなかった。まさか、湯船ねで眠ってしまうなんて…アリエナイ。よっぽど疲れてたんだな…私。
「…んで?」
「なにが」
しばらく肩を振るわせていた銀時は、その笑いの衝動がおさまったらしく、いつものやる気の無い顔で尋ねてきた。
「何でのぼせてんのかって聞いてんだよ」
・
・
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この沈黙は私の最後の抵抗だったりする。寝ててのぼせた、だなんて誰が言える?…この歳になって、それは恥ずかしいでしょうが。
「……寝てました。」
「ぶっ!!―――おまっ…バカだなぁ!」
「ばっ!彼女に対して馬鹿は無いでしょう!?馬鹿は!」
「わ、わりぃ…ぶふっ」
再び、笑いのツボに入った銀時は放っておいて私はさっさと冷蔵庫から、ミネラルウォーターを取り出してきた。
流石は夏。取り出してきたばかりの冷たいミネラルウォーター。そのペットボトルにはもう水滴が付いている。
「…おい、名前!」
「つめたっ!!」
「冷たてーだろ?」
知らないうちに復帰していた銀時が濡れタオルを用意してくれた。ちなみに、この濡れタオルは氷水でしっかりと冷やしたものらしくて、火照った体には丁度いい。
「のぼせた時は濡れタオルと水分がいいんだってよ。」
「へぇ〜…銀時も人並みの知識があるんだね。名前さん、思わず感心しちゃった…」
「ねえねえ、名前さん…名前さんの中の俺のイメージって一体…」
「んー…ムカつく天然パ?」
「ねーねー、銀さん怒っていいかな?」
「あー、うそうそ。嘘だよ、銀時」
本当は、いつだって私に優しくて頼りになって、でもときどき頼りにならなくて、ジャンプ好きで。あ、苺牛乳好きで、糖分王で…それで、それで…
「かっこよくて、私の大好きな人。」
めずらしく、私の口からそんな素直な気持ちが零れてた。目の前には、顔をほんのりと赤に染めた銀時が居た。
「…んで、まだくらくらすんの?」
「んー? だいぶ良くなったと思う。」
「…そう、そりゃよかったな、」
「銀時?」
『いきなりお前が素直になりすぎるから 今度はこっちがくらくらになったんだよ…』
銀時は私に赤い顔で答えると、私は銀時の顔に濡れタオルをかけてやった。
「ふふふっ…ありがとね、銀時。」
たまには、のぼせるのも悪くはないかな?なんて、そう思えたある夏の日の夜。
end
20100806
20101230 再UP
20121109 修正
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夏休み企画12
takuto様リク
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